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攻撃サッカーでより重要となる「インテンシティーを出せる」選手【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:ワールド

小宮良之

2020年03月16日

“ドリームチーム”にはバケーロがいた

ともにインテンシティーの高いビダル(左)とポルトゥ(右)が攻撃サッカーを支えている。(C) Getty Images

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 ボールプレーを重点に置いた戦い方を選択するとしても、「要所にインテンシティーを出せる選手を配置する必要がある」と言われる。

 事実、FCバルセロナでヨハン・クライフが作った“ドリームチーム”では、ホセ・マリア・バケーロが前線でその役割をしていた。バケーロは小さいが頑健な身体つきで、何度でも動き出し、ボールを引き出した。守備に回った時は、球際の強さを見せていた。そのプレー強度によって、敵をかく乱し、本来のパス回しにも厚みを出したのだ。

 バルサではジョゼップ・グアルディオラが監督だった時代も、インテンシティーのある選手を各ポジションに配していた。DFにはカルレス・プジョール、MFにはセイドゥ・ケイタ、FWにはエイドゥル・グジョンセンを用いている。技術レベルはそこまで高くなくとも、単純なパワーやスピードやハードワークに優れる選手たちで、局面において勝利し、それを全体につなげられた。

 今のバルサ監督であるキケ・セティエンも、その点は変わらない。セティエンにとってのインテンシティーは、チリ代表MFアルトゥーロ・ビダルだろうか。様々なポジションで用いている。
 
 格闘家のような風貌のビダルは、プレー強度を上げられる選手の典型と言える。先日のクラシコでは、倒れこみながら転がるボールを頭でつつく姿が印象的だった。インテンシティーとは単なる肉体的な強さではなく、精神的な強さ、士気の高さに置き換えられるかもしれない。

 ビダルは集中力が高く、攻撃では相手の防御線を破る働きができる。先日のチャンピオンズ・リーグ、ナポリ戦の同点弾は象徴的だった。前線でメッシの縦パスを引き出し、ダイレクトでセルヒオ・ブスケッツに落とし、これが右サイドへ展開され、折り返しをアントワーヌ・グリーズマンが決めた。

 ボールを握る力が強いチームは、パスそのもの没頭してしまう傾向がある。しかし勝負において、“キレイすぎる”プレーは、相手に読まれ、付け込まれる。荒々しく防御線を破って、相手の砦を破壊するようなプレーができる人材が不可欠なのだ。

 当然だが、この傾向はバルサだけではない。

 今シーズン、上位に躍進するレアル・ソシエダも、バルサと似たプレーモデルで戦い、マルティン・ウーデゴーやミケル・オジャルサバルのようなテクニシャンがスペクタクルを繰り広げている。しかしチームに欠かせないのは、右サイドアタッカーのポルトゥだと言われる。ポルトゥは技術レベルではふたりに及ばないものの、アスリート能力と闘争心に優れ、右サイドで相手の攻撃に蓋をし、強いシュートを打て、クロスには身体を投げ出せる。

 Jリーグでも、ポゼッションを高め、攻め切るサッカーを志すチームが出てきている。徹底的にパスを回せる選手を揃えなければ、ボールを失ってカウンターを食らい、そこで妥協はできない。しかし勝負を考えると、どこかにインテンシティーを加えられる選手を配置するべきなのだろう。アンバランスなバランスで、戦いは完成に近づくのかもしれない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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