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「ダビデとゴリアテ」の如く…ELで名門アヤックスを撃破したヘタフェの快進撃の理由【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年03月10日

「ダーティー」のレッテルを貼りつけられることも

ELでアヤックスを相手に番狂わせを演じたヘタフェ。快進撃はどこまで続くのか? (C) Getty Images

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 2月27日、ヨーロッパリーグ(EL)のラウンド・オブ32、第2レグ。マドリードの郊外にある小さなクラブであるヘタフェは、昨シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)でベスト4に進出した名門アヤックスと戦い、1-2で敗れたものの、第1レグに本拠地で2-0と勝利していたことで、見事にベスト16に勝ち上がっている。

 ヘタフェを率いるホセ・ボルダラス監督は、聖書「ダビデとゴリアテ」の物語を”実写化”するような戦いを見せた。少年ダビデが石を投げて、槍を持った巨人ゴリアテを倒す。その勇敢さが、活路を開いたのだ。

「ヘタフェのトレーニングでは、歩いている選手がいない」

 それはボルダラスの練習風景を象徴するフレーズになっている。それほどに、緊張度が高い。激しいトレーニングで、戦闘集団と化すのだ。

 一方、ヘタフェの選手は「ダーティー」のレッテルを貼りつけられることもある。球際でギリギリの戦いを挑むだけに、相手の足を削ることも辞さず、一触即発のプレーが多くなる。決して感じは良くない。選手同士が、いさかいを起こす場面もしばしばだ。

 しかしボルダラスは格闘を奨励し、批判には耳を貸さない。実際、ルールの範囲内で戦っているからこそ、勝利と認められる。卑怯な戦い方ではない。
 
 アヤックス戦、ボルダラスは4-4-2の布陣を組み、アヤックスの苛烈な攻撃に立ちはだかった。4-4-2の弱点はDFとMFの間のスペースに、敵を入れてしまうところにある。MFの背後を取ったアタッカーは、防壁なしに襲い掛かってくるので、対応が難しくなる。

 そこで、ボルダラスはDFとMFの間を密にし、少しの隙も与えていない。その練度の高さが白眉だった。確固たるプレーモデルを作っているだけに、そこでの役割が簡潔で明確で、任された選手が個性を出して仕事ができていた。

 では、なぜボルダラスがそこまで選手に信頼されるのか?

 それは指揮官が、選手の力を引き出す采配に優れるからだろう。一長一短があった選手たちが、こぞってキャリアハイを記録。GKダビド・ソリアを筆頭に、ジェネ、マルク・ククレジャ、マウロ・アランバリ、マクシモビッチ、ハイメ・マタなどが能力を開花させた。トレーニングの結果が、勝利と成長に結びついているわけで、その連鎖のエネルギーはすさまじい。

 そしてボルダラスは、その交代策に慧眼が出る。

 アヤックス戦も、逆転弾を浴び、劣勢に回りかけた時だった。すかさず、前線に老練なFWホルヘ・モリーナを投入。浮足立ちかけていたチームに、落ち着きを取り戻させた。

 ヘタフェは強豪クラブを蹴散らし、ELで王者になれるのか――。そうなったら、一つの伝説となる。特筆すべきは、彼らがラ・リーガでも上位を争い、CL出場も可能な順位にいることだろう。

 ダビデがゴリアテを倒す物語は、胸がすく。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。

 
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