新型コロナウイルスの感染防止のため、セリエＡ第26節順延分が無観客試合（３月８日）で行なわれた。いつものサポーターの大声援がなく、静かで違和感を覚えた方もいるだろう。ただ、気が付いた方も多いのではないだろか。サポーターの声援がない分、選手の声やベンチからの指示が聞こえていたことを。試合中、一体どんな声が飛んでいるのだろうか。
 
　頻繁に耳にするのが、「ダイ」だ。日本語でいうと「さぁ」という掛け声になる。「ダイ、ラガッツィ（みんな）」「ダイ、フォルツァ（頑張れ）」など、チームメイトを鼓舞するような場合に使われる。「ダイ、アンディアーモ」（さぁ、行くぞ）という言葉も聞こえてきた。「フリー」というイタリア語の「ソロ」や、いいプレーをした後の「ブラーボ」（いいぞ）、押され気味の時に使われる「カルマ」（落ち着け）というワードも使用頻度が高い。
 
　攻撃時には、「バイ」という言葉が聞かれた。「行け」「ゴー」という意味で、前方にスペースがある場合、「前進しろ」という指示になる。「アバンティ」（前に）も似たような言葉だが、これは「大きく蹴り出せ」というニュアンスが強いだろうか。
 
「ウノ・ドゥエ」（ワンツー）というフレーズも、選手やベンチから聞かれた。味方が相手に囲まれて、視野を確保できていないような状況では、「チ・スィアーモ」（「味方がここに」いるぞ）と呼び掛けている。相手に囲まれている選手に対して、味方がこう言いながらサポートに入るのだ。ベンチからは「アイウータ」（助けろ）という言葉も飛んだ。
 
　中盤や最終ラインで逆サイドに展開する時には、「ジーラ」（回せ）、併せて「ヴェローチェ」（早く）という指示がベンチから飛ぶ。前方の選手をワイドに開かせたい場合の指示は「アプリ」（開け）だ。
 
　パスが欲しい選手は「スィ」（はい）という言葉を使う。「クア」（ここ）も聞こえた。日本人がボールが欲しい場合に「はい、はい」「ここ、ここ」と言うのと同じだ。ペナルティーエリアの外あたりで、こぼれ球に反応する選手に対しては「ティーラ」という声が飛ぶ。「シュート」という意味だ。選手やベンチだけでなく、これは観客がよく口にするワードだ。
 

　守備時には後方の選手から大きな声が飛んでいた。ほとんどがＧＫの声だっただろうか。よく使われるのが、「マルカ」（マーク）、「ウオーモ」（「マークする相手が」いるぞ）、「アッレ・スパッレ」（「背後に相手が」いるぞ）、「オッキオ」（見ろ）など、守備の統率に関するもの。ペナルティーエリア付近でのプレー時には、「センツァ・ファッロ」（ファールをするな）という言葉もよく使われる。選手によっては、「ノー・ファッロ」とも言っていた。
 
　クロスや裏に抜けてきたボールに対して、ＧＫは「ミア」といいながらプレーする。「マイボールだ、任せろ」という意味だ。ディフェンスラインを上げたい時には「サーリ」（上げろ）、「ス」（上がれ）、くさびを受ける相手選手のマーカーには「アタッコロ」（当たりに行け）、ロングボールが来た時には「サルタ」（飛べ）、さらには「コンチェントラーティ」（集中）など、ＧＫは大声を出し続けている。
 
　試合終了直前、リードしているチームのベンチが「アルビトロ」（主審）に対して、「フィニータ」（終わりだ）という言葉を何度も繰り返し、試合終了の笛を急かすのはお馴染みだ。そしてそのホイッスルを聞いた勝利チームの選手や監督、関係者、サポーターは、「チェ・ラ・ファッタ」（やったぞ）と言っていることだろう。
 
　セリエＡでは、しばらく無観客試合が続きそうだ。サポーターの大声援がなく、迫力には欠けるかもしれないが、普段はなかなか聞けない選手やベンチからの声に耳を傾けるのも試合の楽しみ方のひとつではないだろうか。
 
構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部