監督を“見切る”タイミングの難しさ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年02月25日

名将ペップは「監督の旬は3年」

自身の言葉通り、4年目は厳しい戦いを強いられているグアルディオラ(左)。(C) Getty Images

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 いつ監督を見切るべきか?

 クラブフロントとしては、悩ましいところだろう。見切りは、早すぎても遅すぎても、クラブそのものにダメージを与える。そもそも、クラブとしての方向性がないとタイミングなど図れないものだが、たとえあったとしても、見誤ることもある。

「3年かけてチームを作る。それまで辛抱を」

 Jリーグでは、のんきな目標を掲げてスタートする監督も少なくない。チームを作るには時間がかかるもので、たった数試合の結果だけで判断すべきではないだろう。監督の仕事は選択し、統率し、決断し、大変な作業だ。 

 しかしながら、10試合も戦ってまるで結果がついてこない場合は、その内容を精査するべきだろう。内容が悪かったとき(例えば少しもボールを握れず、自陣でのプレーを強いられ、ろくにチャンスを作れず、同じようなミスを重ね、失点を浴び続ける)、見切りをつけるのもやむを得ない。その基準は、選手の言動に委ねてもいいだろう。

「何をすればいいか、わからない」

 試合後、複数の選手が口々に愚痴を洩らしていたら、信号は黄色から赤色にほぼ変わっている。逆に選手が監督を信じ、覇気を出して戦っているなら、まだ見込みはある。しかしそうでないなら、未来はない。
 
 危機に瀕した監督が、ときに選手を替えて、抜擢した控え選手の一時的奮闘で、目の前の試合を制することはある。しかし場当たり的な成果に過ぎない。やがてチームは窮地に陥って、その時はもはや打つ手がないだろう。集団が消耗しきっているからだ。

 2019年のJリーグも、その見切りが残留や降格の分岐点になった。クラブマネジメントが監督の資質だけでなく、クラブの体制の問題でもあることが分かるだろう。監督選びと見切りの二つの決定は、密接につながっているのだ。

 いずれにせよ、チームを作るのに3年も待てるものではない。

「監督の旬は3年だ」

 バルサ監督時代、名将ジョゼップ・グアルディオラはそう定義していた。3年もすれば、同じ監督の下では選手は倦怠感を覚え出す。同じようなメンバー、同じような戦術、同じ監督では、退屈し、停滞する。いくら規律を厳しくし、空気を変えても、そこには限界があるのだ。
 
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