戦術は平凡でも…ジダンに見る名将の「3つの条件」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年02月05日

元スター選手としてのエゴがない

マドリーを前人未踏のCL3連覇に導いたジダン監督。心酔する選手も少なくない。(C) Getty Images

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 欧州3連覇を成し遂げているジネディーヌ・ジダン監督は、なぜ名将なのか?

 まず一つは、ジダンの選手時代の経歴がカリスマになっている点があるだろう。今もボールタッチは、スター選手にも一目を置かれるほど。何を言っても、説得力が違うのだ。

「ジダンに言われたら、納得するよ」

 選手たちはそう言って、自然に指示に服する。

 そしてジダンは名選手としての慧眼を用いて、選手の選択を間違えない。どのポジションで、どの選手が、チームが勝利するために一番いい働きができるのか。それを的確に見極められる。その選択の確かさによって、控えに回った選手も不満を抑え、ポジション奪還のために力を尽くす。そこで、健全な競争も生まれるのだ。

 ジダンには、元スター選手としてのエゴがないことも大きいだろう。誠実で、物静かで、黙々と仕事をする。選手やメディアに何かを強要するような強権を振るう、間抜けな真似はしない。どんな重圧の中でも、粛々と自らの仕事に集中できるのだ。

 その人間性こそ、集団を統率するという面で“名将ジダン”の土台になっている。

 ジダンは選択し、統率するプロセスにおいて、大胆で細心な決断ができる。最たる例として、フロントの圧力にも、彼は抗える。どの選手が必要で、必要ではないのか。それに対して、誰にも忖度せず、私心を挟まず、決断ができる。これは簡単のように思えるが、なかなかできることではない。現場の意見を守ることができるリーダーは、選手からの信望を失わないものだ。
 
 兄貴気取りで特定の選手を飲みに誘って、自分に取り込む程度の監督は、遅かれ早かれ、選手からバカにされる。

 名将ジダンは、選手を徹底的に公平に扱う。たとえ関係が悪くなったような選手でも、ピッチで成果を上げられるなら、起用することを厭わない。戦力外になっていたガレス・ベイル、ハメス・ロドリゲスの抜擢などは典型的な例だろう。

「ジダンは麾下選手たちを愛する」

 エデン・アザールは言う。愛情は伝わるものだ。

 ジダンはメディアと喧嘩しないが、媚びへつらったりもしない。マスコミから、「なぜカリム・ベンゼマを使うのか?」とバッシングを受けたことがあったが、ジダンは一切動じなかった。決断に自信をもって起用し続け、結果をたたき出させているのだ。

 その決断力は、監督として群を抜いている。
 
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