シャビとピルロの領域に近づきつつあるバレンシアの司令塔【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2019年12月27日

マドリーのカンテラ時代には態度を非難されることも

来年4月で31歳となるパレホ。初のEURO出場が2020年の大きな目標だ。(C) Getty Images

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 フットボールにおいて、ひとりのプレイヤーが試合を支配することは並大抵の能力の持ち主でないとできない芸当だ。近年ではシャビとアンドレア・ピルロがその代表格だったが、現在その領域に近づきつつある選手がいる。バレンシアのダニエル・パレホだ。先日のレアル・マドリー戦(1-1)でもマエストロ然とした貫禄溢れるプレーで攻守にチームを牽引した。

 パレホの卓越したリーダーシップは試合を見れば一目瞭然だ。味方の選手はボールを持てば、まずこのキャプテンを探す。判断に迷えば、ボールを預ける。その時、パレホはボールを受けやすい位置に動いて、寄せて来るマーカーの動きをつぶさに観察しつつ視野を確保するために身体の向きを整えながら、正確なファーストコントロールから流れるように次のアクションへと移行する。

 味方が難しい状況でパスを出しても、この一連のプレーによって困難な局面を打破して、有利な展開に変えてしまう。

 そのマドリー戦、立ち上がりこそ相手のプレスに苦しめられたが、徐々にかいくぐり、スペースと時間を享受できるようになった。マドリーがその隙を与えてしまったのか、あるいはパレホがインテリジェンスを駆使してその状況を手繰り寄せたのかまでは分からないが、これによってゲームメイクをするための環境を手に入れたのだった。
 
 マドリーのカンテラ時代にかのアルフレッド・ディ・ステファノから称賛されたエピソードが雄弁に物語るように、パレホは若い頃から将来を嘱望された選手だった。しかしアグレッシブさとプレーの継続性に欠け、ピッチ上での態度を非難されたこともあった。しかし、同時に彼は遅咲きの選手でもあった。

 常に刹那的で結果の猶予を与えないマドリーに居場所はなかったが、ヘタフェ、そしてバレンシアで経験を積み重ねるごとに成長。主将としてアイドルとしてメスタージャのファンから絶大な寵愛を受けるまでになった。

 今シーズン序盤、バレンシアは大きな困難に直面した。開幕早々マルセリーノ・ガルシア・トラル監督が経営陣との対立が原因で解任され、先行き不透明な状況となったが、そこで改めて浮き彫りになったのがパレホのリーダーシップであり、ピッチ上で見せる支配力であった。ここまで中盤の屋台骨を支えながら、周囲に影響力を発揮できる選手は、セルヒオ・ブスケッツに衰えの兆しが見えるいま、ラ・リーガにはパレホ以外に見当たらない。
 
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