清水桜が丘の開校は2013年。旧・清水商と庵原が統合されて誕生した。サッカー部はインターハイに2度、冬の選手権に1度出場。プリンスリーグ東海でも、毎年のように上位へ顔を出している。
創設7年目で3度の全国大会出場。他の新設校であれば上々の結果だろう。だが、“清商”の流れを汲むチームにとっては少々物足りない成績だ。清水商は全国優勝12回。90年代の高校サッカー界を牽引し、多くの選手をプロの世界に送り込んできた。元日本代表の藤田俊哉(元磐田ほか)、名波浩(元磐田ほか)、川口能活(元横浜Mほか)、小野伸二(琉球)。いずれも、日本サッカー界を彩ってきた巨星たちばかりである。

現在のチームを率いるのは片瀬晴城監督。
清水商時代から指揮を執ってきた大滝雅良監督から昨年4月にバトンを受け取り、「サッカーを面白がる」をモットーに選手たちと日々向き合っている。
近年、チームは頂点に立てていない。むしろ、全国大会に顔出す機会もめっきり減った。今年のチームも上位争いを繰り広げるプリンスリーグ東海で、静岡学園や藤枝東に敗戦。とりわけ、問題だったのが度々複数失点を喫する守備陣。ライバルを下してインターハイ行きのチケットは確保したが、全国でどこまで通用するか危ぶまれていた。
「プリンスリーグ東海での大量失点。その間に東海総体があって、優勝したけど失点が多かった。元々はやるべきことをやれば大丈夫だけど、やらないから大量失点をしていた」
(片瀬監督)
迎えた夏のインターハイ。4年ぶりの全国舞台では初戦で東福岡を2−0で撃破し、2回戦ではC大阪入団内定の西川潤率いる桐光学園と互角以上の勝負を演じた。結果的に夏の王者に0−0のPK負けを喫したものの、見違えるようなパフォーマンスで成長の跡を残した。
最終ラインはCBの東海林泰地(3年)を中心にタフさを見せ、強豪校相手に無失点。攻撃陣も遅攻とショートカウンターを使い分け、全国レベルの相手から何度もチャンスを作り出した。1年次からFWのレギュラーを務める主将の松永颯太(3年)や、東福岡戦で2ゴールを決めた古長谷千博(3年)、豊富な運動量が売りの安部侑真(3年)の両サイドアタッカーは上のレベルでも通用することを証明。2年生ながら中盤の底で司令塔役を担う宇山翔太も成長が著しく、下級生の台頭も目立つ。冬に向けて、期待を抱かせたのは間違いない。
そして、何よりこのインターハイの収穫は日本一のチームを知れた点だ。
今までは東海や静岡県内で戦い、頂点に立つイメージが湧きづらかった。勝ち切れたとしても、全国の話ではないからだ。だが、桐光学園との対戦でより身近なものとなった。
「お前たちは分かっていないかもしれないけど、全国優勝ってそんなに遠くないぞ」(片瀬監督)
日本一が手の届かない場所にあるわけではないと知ったのだ。