11月20日、福岡市博多区にある東福岡高校の校舎内で、中島賢星と増山朝陽のJリーグ入団内定発表の会見が行なわれた。夏のインターハイで全国優勝を成し遂げ、今冬の高校選手権にも出場を決めた東福岡の躍進の原動力となっているふたりだ。
 
　主にトップ下で、決定的な仕事をこなす中島が横浜F・マリノスへ。右ワイドアタッカーとして、東福岡のサイド攻撃を牽引する増山がヴィッセル神戸へ加入が内定した。
 
　ともにやや緊張の面持ちで臨んだ記者会見で、ふたりはプロ内定の喜びと今後への決意を語っている。早くから複数のクラブが競合した末に、横浜入りを決意した中島賢星は、決断までに迷いがあったことも明かした。
「これまでどこに行くか悩んで、もやもやしていたけど、F・マリノス入りが決まって、一区切りつけた。ここからやるべきことをやっていきたい。僕はマリノスのジュニア（マリノス追浜）でプレーしていて、いつかこのクラブでプロになることが夢だった。
 
　ただ、いろんなクラブが興味を示してくれるようになって、評価もしてもらえたので、正直迷うところがあった。それでも、マリノスを選んだのは、やっぱり幼い頃に夢や希望、そしてあこがれを抱かせてくれたクラブだったから。自分のために動いてくれた公文さん（横浜スカウト）にはすごく感謝しているし、早く結果で恩返しがしたい」
 
　また、増山は率直に喜びを語るとともに、今後の成長への決意を口にした。
「今の心境は素直に嬉しい。ヴィッセルを選んだのは、自分にとってどれが一番良いか考えて、どうすれば自分が成長していくかを考えての決断。ヴィッセルは歳の近い選手が多く、仲良くしたいとは思うが、馴れ合いにならず、厳しく切磋琢磨できるようになりたい。
 
　今日はこうして、幼い頃からの夢だったプロサッカー選手になれることが決まって、素直に嬉しい。ヴィッセルで新たなるスタートが切れることを誇りに思う。たくさんの人に感謝したい」
 
　また、今後、プロとしていかなるプレーを見せていきたいのか、という質問に対して、中島は国内外のトッププレーヤーの名を挙げつつ、こう答えている。
「ジダン選手やイニエスタ選手のような柔らかいボールタッチや『そこにパスを出すのか』と意表を突ける選手になりたい。最近は、中村俊輔選手のプレー集を見ているが、プレーの質がとにかく高いので、そこは真似をしたいし、あのパスを受けて点を取りたいなと思っている。これから日本を代表する選手になって、世界でプレーできる選手になりたい」
 
　一方の増山は、来年にはチームメイトとなる、38歳のストライカーの名を挙げてこう答えた。
「ヴィッセルで印象的だったのはマルキーニョス選手で、『ここにパスを出してくれるのか』と驚くようなプレーをするので、そうしたパスをもっと受けて、シュートを決めてみたい。自分がどこまで通用するかはまだ分からないが、武器であるドリブルを止められたら、そこで萎えるのではなく、さらに練習をして、『次は抜いてやる!!』と臆することなくやっていきたい」
 
　そして、最後の高校選手権では12月30日の開幕戦で、東京B代表の三鷹と対戦することが決定。インターハイに続く二冠達成が懸かっている。ふたりの意気込みも相当なものだ。
 
「インターハイでは優勝したけど、個人的には悔しい形で終わっているので、優勝して自分の納得する形で終わりたい」と中島が語れば、インターハイで大活躍を見せた増山も「プロへ行くことが決まってすっきりしたので、選手権に気持ちを切り替えてやっていきたい」と最後の舞台へ決意を固めていた。
 
■プロフィール
 中島賢星（なかしま・けんせい）／1996年９月23日生まれ、福岡県出身。182センチ・71キロ。福岡U-15-東福岡高。横浜など早くから複数のJクラブが注目するユース世代屈指の万能型アタッカー。ゲームメイクからフィニッシュまでハイレベルな攻撃性能を持つ。
 
■プロフィール
増山朝陽（ますやま・あさひ）／1997年１月27日生まれ、福岡県出身。179センチ・72キロ。福岡板付中-東福岡高。ずば抜けた身体能力で相手DFを引きちぎる高速ドリブルが魅力。インターハイでの大活躍で複数のJクラブが注目するに至ったシンデレラボーイ。
 
取材・文：安藤隆人（サッカージャーナリスト）