[J１22節]名古屋３-０川崎／８月10日／豊田
 
　10戦未勝利――。５月17日のアウェーでの川崎戦に引き分けて以降、２か月以上、勝ち星から遠ざかっていた名古屋にようやく歓喜の時が訪れた。
 
　リーグ２連覇中の川崎をホームに迎えた22節、11分に和泉竜司のゴールで先制した名古屋は、浮き足立つ川崎を尻目に、18分には和泉の２点目でリードを広げる。後半立ち上がりには川崎に攻め込まれる時間帯もあったが、64分には前田直輝のゴールで加点。守っては中谷進之介、ランゲラックらの身体を張ったディフェンスで川崎の強力攻撃陣を無得点に抑え、11戦ぶりの勝利をサポーターに届けた。
 
　改めて示したのは、風間八宏監督の下で貫き続けてきた“攻める”姿勢だ。指揮官はチームが長いトンネルを彷徨っているなかでも、チャンスを作れている点を評価し、「あとは決め切るところ」と何度も口にしてきた。実際、２試合続けて後半アディショナルタイムに同点に追い付かれた20節のG大阪戦、21節の浦和戦は先手を取りながら、決定的なチャンスをモノにできず、終盤に運動量が落ちて、勝点を失った。
 

　それでも殊勲の和泉が川崎戦後に「自分たちがこれまでやってきたボールを持って、得点を奪うというところをもう一度、意識しようと話していました。早めに２点を取れて、でもここ２試合は（同じような状況で）勝点を落としていたので、ギアを上げて３点目を奪いにいこうと確認しました。そういう意味では自分たちの試合ができたと思います」と話したように、ここまでの反省を活かしたと言える。
 
　風間監督にこの一勝の意味を訊くと、「一勝の意味というより続けなければいけない。いつも言っていますが、特別な試合はないですし、この勝ちはすぐに忘れなければいけません。次は今日よりも良い試合をしなければいけない。そしてまだまだ自分たちが思った通りにプレーできているかといえば、それは違います。だからこそ、もっと求めていきたいと思います」と、“らしい”答えが返ってきた。
 
　ただ、これまでと異なりチャンスをしっかり決め切って勝った点に関してはこうも話してくれた。
 
「チャンスを作るのはチームです。チームでどれだけチャンスを作れるかがチーム力で、それはトレーニングから出てくる。ですが、最後に決めるという部分は個人の力。ただ、こういう形で自分たちが持ったイメージから選手が決めることで、チームの大きな力となる。なぜかと言えば、個人の質と自信になるから。それが一番大事です。
 
　今までも実際、ほとんどのゲームで多くのチャンスを作って、自分たちのリズムがあるのですが、決め切れずになかなか勝てなかった。今日のように、今すごく伸びている彼らが点を決めてくれたことはチームにとって大きな力となりますし、そういう選手がどんどん出てきてほしいと思います」
 
　この勝利で失いかけていた自信は取り戻せるはずだ。もっともそれが過信に変わっては意味がなく、この試合では川崎が信じられないような不甲斐ない出来だったことも考慮しなくてはいけないだろう。大事なのはアウェーで松本と対戦する次戦（８月18日）だ。ようやく手にした一勝の意味が消えないよう、力強い戦いを見せてもらいたい。
 
取材・文●本田健介（サッカーダイジェストの編集部）

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