【小宮良之の日本サッカー兵法書】「プレーヤーズファースト」――シメオネとキケ・セティエン、相反する2人の智将の共通点

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2019年05月17日

己が先頭に立ち、勇猛に立ち向かう。

タッチライン脇で大声を張り上げ、選手を鼓舞するシメオネ。まさに闘将と呼ぶに相応しい。(C)Getty Images

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 「武士たる者に弱き者なし」

 戦国時代を生きた豊後の猛将、立花道雪はそう持論を述べている。道雪は100度以上の戦場を生き延び、一度も後れを取ったことがない。九州を転戦しながら鬼神の働きを示し、とりわけ、その統率力は際立っていた。

「もし弱いと言われる武士がいるとしても、それはその者が悪いのではない。大将が励まし、その力を引き出せていないのである。わたしの家中では士分はもちろん、雑兵に至るまで、数度の功名もないような人間はいない。もし他家で人に後れをとる武士がいるなら、わたしに仕えるが良い。必ず逸物にしてやる」

 道雪は、誰よりも勇ましかった。その姿に味方が奮い立った。もちろん、敗北必至の蛮勇はしない。聡明な判断を下した後、烈火の如く攻め懸かって、敵を圧倒した。それ故に、配下の者たちも信じて付いてきたという。

「勇将の下に弱卒なし」

 リーダーとして、シンプルな論理だろう。

 この言葉は、人材マネジメントのベースありで、必然的にサッカーの世界にも置き換えられる。

「プロになった選手で、ダメなものなどいない。もしダメ扱いされているなら、本人が悪いのではないだろう。監督が力を引き出せていないのだ」
 
 優れた監督は、多かれ少なかれ、こう考えている。選手に対して、強いリスペクトがある。監督が選手を信じ、愛情を懸けられるか――。これが集団として大きな力を生み出すのだ。
 
アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督は、まさに勇猛さを選手に伝播させられる達人と言えるだろう。自らがまず、敵に怯まない。全身全霊で勝負を懸けられる。その姿を見せつけることで、全軍を引っ張るのだ。

「シメオネイズムを注入」

 そう表現されるが、選手たちは人が変わったように戦闘的になって、目を血走らせ、歯を食いしばって、本来の力を発揮する。

 選手の力を引き出す方法は、シメオネのように自らの戦闘意欲を示すだけではないだろう。そのアルゼンチン人指揮官とは対照的なサッカーを志向するベティスのキケ・セティエン監督は、まったく違ったアプローチでそれを可能にしている。
 

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