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R・マドリーの日本人スタッフが語る“こぼれ話”「なぜスタッフ15人のクラブがポルトガル1部で戦えるのか」

カテゴリ:ワールド

江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

2019年01月17日

小さなレストランがメインスポンサーに。

R・マドリーのフロントスタッフとしてペレス会長(左)の下で働いた酒井氏(左)。MBAコース時代のクラスメイトは世界中で活躍している。

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 R・マドリーのスポーツマネジメントMBAコースに日本人で初めて合格し、卒業後にスタッフとなった酒井浩之氏に興味深いこぼれ話を伺う当連載。その5回目は、ポルトガルのサンタ・ミゲル島にある、サンタ・クララという昇格クラブの取り組みについて話を訊いた。

――◇◇――◇◇――◇◇――◇◇――

 大学院(MBAコース)時代の友人は、いま世界中で活躍しています。フィオレンティーナやベジクタシュ、ナント、コロンビアのアトレティコ・ナシオナル、ウルグアイのナシオナルなどで、クラブのスタッフになった者もいれば、僕のようにスポーツマネジメントをしている者もいます。

 同級生のひとりに、パキスタンの国営セメント会社の御曹司がいたんですが、先日、コロンビア人のマリオというクラスメイトと組んで、アトレティコ・マドリーのアカデミーをパキスタンに立ち上げたんです。父親からの出資を仰いだんでしょう。彼の卒論が、「スペインのクラブを買収してラ・リーガで優勝するまでの道のり」という内容だったんですが、決して夢物語ではないんです(笑)。その気になれば、クラブのひとつやふたつポンと買えるぐらいの財産を持っていますから。

 先日、アマルというクラスメイトの兄がオーナーのひとりとなっている、ポルトガルのサンタ・クララというチームを訪問してきました。アマルはサウジアラビアとブラジルのハーフで、現在はUAE1部のアル・ワフダFCというチームで、ブラジル人選手の通訳をしています。

 サンタ・クララは、アゾーレ諸島のひとつサンタ・ミゲル島のポンタ・デルガーダという町にあります。人口は2万人ちょっとですね。リスボンから飛行機で2時間半ほどです。今シーズン、15年ぶりに1部に昇格した本当に小さなクラブで、元ポルトガル代表のFW、ペドロ・パウレタを輩出したことでも知られています。

 興味深かったのが、『マリセーラ』という地元の小さなレストランがメインスポンサーとなっている点です。

 そのレストランは、スタジアムから車で10分ほどの海沿いにある雰囲気の良いお店で、味も格別でした。スポンサーになったことでクラブ関係者がよく来店するようになり、「レストランに行けば選手に会える」と評判が評判を呼び、売り上げが大幅にアップしたそうです。

 いまでは25万ユーロ(約3000万円)ほどをクラブに出資しているそうですが、採算は十分なプラスになっていて、店のオーナーはホクホク顔でしたよ。
 

このソン・ミゲルを本拠地とするサンタ・クララ。17節終了時点で9位(6勝3分け8敗)と大健闘を見せている。

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 もうひとつ特徴的なのが、同じくメインスポンサーとなっているサンタンデール・ポルトガル銀行に、クラブの経理業務をアウトソーシングしていることです。そのため、クラブスタッフは15人ほどしかいません。出資を受けながら、経理を代行してもらっているので一石二鳥です。

 その分、選手やその家族がその銀行で口座やクレジットカードを作るので、スポンサー側にもメリットはあるんです。

 同じような例が、マドリーのスポンサーになっているサニータスという病院です。ガレス・ベイルのようなトッププレーヤーがそこで手術をするので、信用性が増して患者が増えるわけです。

 日本のクラブは、スポンサーに出資してもらい、ただその企業名を露出するだけで終わってしまいがちです。しかし、それだけでは発展性がないと言うか、とにかくスポンサーにもっと還元することが重要なんです。そうすればクラブへの出資額が増えるだろうし、ウィンウィンの関係でお互いに成長していけるわけです。

 サンタ・クララのような小さなクラブが、ポルトやベンフィカと同じ舞台で戦っている。その運営の仕方は興味深かったですね。

●取材・構成:江國森(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

※『ワールドサッカーダイジェスト』2019年1月3日号より一部転載

酒井浩之氏のプロフィール
広告代理店やスポーツブランドでの勤務を経て、2015年3月にレアル・マドリーのスポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、同クラブの職員に採用され、マーケティングを担当する。17年7月に退団し、現在は日本を拠点にスポーツビジネスを展開中。1979年愛知県生まれの神奈川県育ち。
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