[高校選手権・３回戦]瀬戸内２－１岡山学芸館／１月３日／駒沢

　広島の瀬戸内が、同校史上初の選手権でベスト８まで駒を進めた。同じ中国プリンスリーグに属する、いわば勝手知ったる岡山学芸館と対戦した３回戦で２-１の勝利。前半に先制されながらも自分たちの“ポゼッションスタイル”を貫いての見事な逆転劇であった。

　この試合でヒーローとなったのは、２年生CFの中川歩夢だ。

　２回戦の都市大塩尻戦で値千金の決勝ゴールをマークして波に乗っていた点取り屋は、前半終了間際の40分に「次の点が大事になると思って気持ちで押し込んだ」という同点弾を決めると、後半15分には「勝負になると思って決めた」と逆転ゴールを奪った。いずれもゴールの隅を突く完璧な一撃だった。

　そのパフォーマンスは指揮官も称える内容だ。試合後、安藤正晴監督は、「ちょっと出来すぎですね（笑）」としながらも、「ポジショニングがだいぶ良くなってきて、相手のディフェンスラインと中盤の間でボールを受けられるようになってきている。夏以降、身体も出来てきたんで、踏ん張って低いシュートも打てている」と評した。

　二人の兄の影響でサッカーを始めたという中川は、「お兄ちゃんに『シュートはしっかりとインサイドで打て』って言われていて意識して打った」という教えに触れながら、冷静に得点シーンを振り返っている。

「右足で取った１点目のほうがインパクトも良くて、キーパーがどっちかというとニアに寄っていたのでファーを突く形で狙いました。理想的な形でした。点を取ってからプレーに余裕もできたんで、きちんと周りを見られるようになっていたと思います」

　その持ち味は点を取ることだけではない。３トップの真ん中から中盤に下がってビルドアップに参加してからの丁寧なちらしもお手の物で、前線からの守備も怠らない。リバプールのサッカーを手本としているチームにあって、その存在は、まさにブラジル代表CFロベルト・フィルミーノのようである。

　そんな“和製フィルミーノ”中川は、「今日は自分だけの力じゃない。みんなが守ってくれたから勝てた」と２ゴールを挙げても奢りはない。「目の前の試合を全力で戦うことが大事。チームが勝つことを優先して頑張りたい」と力強く意気込んだ。

取材・文●羽澄凜太郎（サッカーダイジェストWeb編集部）