新生マンチェスター・ユナイテッドの初期診断 ファン・ハールは何をどう変えたか?

カテゴリ:メガクラブ

内藤秀明

2014年08月07日

システム変更の小さくないメリット。

ファン・ハール監督(左)が導入した3-4-1-2は、人材にマッチしたシステムだろう。名将の手によって、チーム作りが急ピッチで進む。 (C) Getty Images

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 今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドはひと味違う。アメリカ遠征は4勝1分けの無敗。ロサンゼルス・ギャラクシー(7-0)を除けば、ローマ(3-2)、インテル(0-0)、レアル・マドリー(3-1)、そしてリバプール(3-1)と欧州の強豪を相手にしての無敗は、チーム作りが順調に進んでいる証拠だ。少なくとも、タイのオールスターチームや横浜F・マリノスに敗れ、2勝1分け2敗という不出来に終わった1年前のデイビッド・モイーズ政権のスタートに比べれば、結果、内容ともに充実しているのは間違いない。
 
 ルイス・ファン・ハールを新監督に迎えたユナイテッドは、どう変わったのか。
 
 もっとも分かりやすい変化はシステムの変更だ。ファン・ハールは、クラブの伝統とも言うべき4-4-2(4-2-3-1)ではなく、3バックの3-4-1-2を採用した。早くも現われているのがそのメリットで、もっとも大きなそれは、致命的な欠陥を抱えていた守備の改善だ。
 
 ロイ・キーンが2005年に退団してからユナイテッドに欠けていたのが、最終ラインをプロテクトして守備を安定させる強靭なセントラルMFだった。2ライン(DFとMF)間の危険なスペースを埋めながら、相手のボールホルダーにアタックしてピンチの芽を摘み取る、いわゆる「潰し屋」の不在は、チームの大きな泣きどころであり、弱体化に歯止めがかからない守備の元凶のひとつだった。
 
 3バックの採用によって可能になったのが、センターバックが前に出る積極的な守備だ。中央に入った一枚がフォアリベロとして振る舞い、2ライン間でボールを受けようとする相手選手を鋭い出足で潰しにかかる。アメリカ遠征でこの役割を担ったフィル・ジョーンズが、プレーの精度をさらに高めていけば、守備再建のソリューションとなるだろう。
 
 システム変更によるメリットのもうひとつは、人材にマッチしているという点だ。つまり、現有戦力をより有効に活用できるのだ。
 
 そのひとつがサイドプレーヤー。守備の貢献は買えるが打開力が物足りないウイング(アントニオ・バレンシアやアシュリー・ヤング)、攻撃力は十分ながら守備が心許ないサイドバック(ラファエウ・ダ・シウバ)が、ウイングバックでは弱点が目立たなくなり、持ち味がより活きるようになった。
 
 サウサンプトンから獲得した新鋭の左サイドバックのルーク・ショーも、縦パスを出すタイミング、キックの精度、攻め上がりのタイミングなどが素晴らしい攻撃型で、ウイングバックとして申し分のない資質を備えていると言えるだろう。
 
「2トップ+トップ下」の構成となる前線も、リソース(人的資源)に合致している。ロビン・ファン・ペルシ、ウェイン・ルーニー、ダニー・ウェルベック、ハビエル・エルナンデスのFW陣はもちろん、攻撃的MFの香川真司、ファン・マヌエル・マタもサイドより中央で活きるタイプだ。2から3への中央のポジションの「増枠」は、理に適っている。
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