[高校サッカー選手権準々決勝】上田西 ３-２ 明秀日立／１月５日／駒沢
 
　前半12分に先制しながらも、流れを掴みきれず、わずか11分間で逆転を許していた明秀日立は、自分たちを見失っていた。
 
　１-２でハーフタイムを迎えたと同時に選手たちをピッチサイドに集め、いつものように前半を総括した萬場努監督は、ここで“先生”としての一面を見せる。前半16分の同点ゴールとなったPKを含めてこの日の審判のジャッジに対してふてくされた態度を見せていた“教え子”たちに怒りをぶつけたのだ。
 
「怒りました。やるべきことをやる前に意識が審判とか外的な要因に向かっていたので、ちょっとそれは違うだろうと。PKの判定から審判に対して敬意を払えていなかったので、かなり厳しく指導しましたね」
 
　後半開始早々の１分にロングスローによるパワープレーから失点して出ばなを挫かれた明秀日立だったが、ハーフタイムに恩師から受けた痛烈な檄による影響は、ポジティブに作用していた。萬場監督が、「あいつと心中するつもりで１年間やってきた」と信頼を置いてきたキャプテンの深見凜（３年）は、「監督の言葉もあって、気持ちは全然折れなかった」と明かす。
 
　キャプテンがそう振り返ったように精神的に落ち着きを取り戻した明秀日立は、後半５分にエースの荒井彗伊太（３年）が１点差に詰め寄るゴールを決めて食い下がってみせた。しかし、あと一歩及ばずに埼玉スタジアムへの道は閉ざされた。
 
　目標にしていたベスト８入りを果たした選手たちを、「新しい扉を開いてくれた」と称えた萬場監督だが、心に募るのは悔恨の念だ。
 
「割り切って上田西が攻めてきた時に対応ができなかったのは、我々の未熟さです。相手が絶対的に強くてやられたという負けではないと思ってます。あくまで相手のやり方というより自分たちのスキルを強くするために反省したいです。もうちょっとやれば、本当に日本一に爪を引っ掛けられるかなっていう感覚は得られたんですけど」