タイでKINGと呼ばれる男――チャナティップも憧れた日本人選手の紆余曲折のサッカー人生

カテゴリ:特集

佐々木裕介

2017年12月21日

小学校で「用務員のおじさん」をやりながら練習していたJFL時代。

タイで9年間に渡りプレーを続ける猿田。現地の日本人選手からは「KING」と呼ばれ尊敬を集める。写真:佐々木裕介

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 国民が“王様は特別な存在、独りしかいない”というタイ王国で“KING”と呼ばれる日本人がいる。プロサッカー選手、猿田浩得だ。タイへ渡って丸9年、築き残した功績から、同じくタイでプレーする日本人選手たちは敬意を払い彼をそう呼んでいる。束の間のオフシーズンを楽しむ彼に、歩んだサッカー人生のあれこれを聞かせてもらった。
 
――◆――◆――

 
―――実はスタジアムでご家族と一緒に居る姿を何度も見ていて、いつも温かい空気感を感じていたんです。
 
「そうですか(照笑)。でも家族愛は強いと思います。それは両親や兄弟に対しても同じで。2歳違いの子供たち(息子/6歳、娘/4歳)はタイで生まれました。娘が産まれた時は妻が付きっ切りで、息子を連れて40キロ離れた練習場へ毎日通っていたのが懐かしいですね。僕が練習中、息子はグラウンドの脇でクラブスタッフやチームメイトの彼女や奥さんなどに面倒を見てもらっていて。家族を大事にするタイの温かさを感じますよね」
 
―――タイでの話の前に、Jリーガー時代を過ごした松山(愛媛FC時代)での話も少し聞かせてください。どんな生活をされていたのでしょう。
 
「愛媛FCへ入った1年目は、チームはまだJFLだったんです。要はセミプロですよね。朝は小学校へ通勤し、用務員のおじさんやっていましたよ。朝6時に校門を開けて子供たちを迎える準備から始まって、用務員の仕事をして、お昼は職員室で同僚の先生たちと一緒に給食食べて帰るみたいな。その後にチーム練習へ行くという生活でした。でも毎日が新鮮で楽しかったなあ。良い思い出です」
 
―――それから、シンガポールで1年、タイで9年。海外での挑戦を選んだきっかけは何だったのでしょうか?
 
「同郷で幼馴染みの柴村直弥(元福岡、徳島、鳥取/ラトビア、ポーランド、ウズベキスタンのトップリーグでもプレー)の存在が大きいですね。実は僕、東南アジアへ渡る前に、アメリカへトライアルを受けに行っているんです。ファンだったデイビッド・ベッカムがアメリカへ移籍して世界が湧いたタイミングで、同じステージ(MLS)に立ちたい一心で。下手くそな英語で書いた履歴書を送って、根拠のない自信を持ってマイアミへ受けに行ったんですが駄目で。その後も親の細いつながりを頼って連絡したヒューストン在住の方の家に居候させていただきながら、週末にトライアルを転戦するようなことを3か月間、でもそんな甘くなくって。
 
 それまで貯めた100万強の貯金もあっという間になくなって帰国を決意したタイミングで、シンガポールの話(バレスティア・カルサFC)が舞い込んできたんです。母には反対されましたが挑戦したくてね。いまこうやってタイで選手として居られるのも、あのアメリカでの経験だったり、シンガポールでの半年があったからこそだと思っていますし、私に“気付き”を与えてくれた方々や環境に感謝しています」
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