【番記者通信】さようなら、ティト・ビラノバ。その死を悼んで…|バルセロナ

カテゴリ:メガクラブ

ルイス・マルティン

2014年05月01日

関わった人々に、素晴らしい思い出を残した良識の男

前バルセロナ監督のティト・ビラノバ氏に黙とうを捧げる選手たち。彼の死は、多くの人々を悲しませた。 (C)Getty Images

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 ティト・ビラノバと初めて会ったのは、バルセロナから北東へ向かったところにある小さな海沿いの町、プレミア・デ・マルだった。それはジョゼップ・グアルディオラが、監督として初めて指揮を執った試合でのことだ。それからというもの、何度も彼と接してきたが、その度に温かい人間性を感じてきた。
 
 彼と私は特に親しい友人だったわけではない。時々、バルセロナのボケリア市場のバルで顔を合わせ、一緒に朝食をとっていたくらいの間柄だ。私たちは一緒に名物のカタツムリを食べた。遠征の時に立ち寄る空港では、音楽の話をした。最近のおすすめのレストランの話に、時には娘たちの話も。彼は、自分の息子がどれだけ良い選手かということを、少し自慢げに話してくれた。そこには互いへのリスペクトがあったし、私はそんな彼のことが好きだった。
 
 だから、4月の終わりに突然ビラノバがこの世を去ったのは、私にとって大きな悲しみだった。彼の死去という一報は、多くの人を悲しませた。
 
 家族以外で最もその死を悲しんだのは、かつてバルセロナでともに過ごした選手や指導者たちだ。ビラノバはジョルディ・ロウラ、ハウメ・トラス、アウレリ・アルティミラ、そしてグアルディオラとマシア(バルセロナ下部組織の選手寮)で出会っている。マシアで過ごした数年間、彼らは常に一緒にいて、皆サッカー選手を夢見る青年たちだった。
 
「あの頃、僕らは若かった。世界を制してやろうという野望を抱いていた。そして、それを成し遂げたんだ」
 
 グアルディオラはそう綴っている。
 
 昨夏クラブにやってきたハウメ・トラス以外は、ペップとともに働いている。アウレリはフィジカルコーチとして。ティトはアシスタント。ジョルディはビデオ分析をした。彼らはリーガ、国王杯、チャンピオンズ・リーグ、クラブワールドカップのタイトルを獲得し、ともに栄光の時を分かち合っている。そして数日前、グアルディオラ以外はバルセロナのカテドラル(大聖堂)で、ティトにさよならを言った。
 
 ティトは死を目前にしていたが、生きることを忘れなかった。4月23日のサン・ジョルディの日(男性は女性に薔薇を、女性は男性に本を贈る)には、モンツェ夫人と車で町を走ったそうだ。27日のサンタ・モンセラットの日に、夫人へ贈る時計を準備してもいた。もし、それまでに自分が死んだ場合には彼女に渡すようにと、親しい友人に託して――。
 
 しかしその2日前の25日、良識の男だったティト・ビラノバはこの世を去った。多くの人々が彼との素晴らしい思い出を振り返っている。私はまたひとり、大事な人を失った。
 
【記者】
Luis MARTIN|El Pais
ルイス・マルティン/エル・パイス
スペインの一般紙『エル・パイス』のバルセロナ番とスペイン代表番を務めるエース記者。バルサの御用新聞とも言えるスポーツ紙『スポルト』の出身で、シャビ、V・バルデス、ピケらと親交が厚く、グアルディオラ(現バイエルン監督)は20年来の親友だ。
 
【翻訳】
豊福晋
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