【蹴球日本を考える】なぜ浦和は“勝負弱い”ままなのか?

カテゴリ:連載・コラム

熊崎敬

2016年12月04日

「勝負強いチームが勝負弱いチームに勝った」という図式。

ラスト15分でシーズンが暗転した浦和。今季も“勝負弱い”イメージは払拭できなかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 チャンピオンシップの3試合は、いずれもアウェーチームが勝利を収め、最後に年間3位の鹿島がシャーレを掲げることになった。
 
 埼玉スタジアムでの最終決戦は、鹿島が勝ったというより、浦和が負けた試合のように見えた。
 
 敵の甘いマークに助けられ、幸先よく7分に先制したが、浦和らしい攻撃的な試合運びができなかった。最終ラインに5人が並ぶ受け身の時間が長く続き、敵陣でのプログラムされたような緻密なパス回しは陰を潜めた。
 
 今季の浦和は守備が確実に向上したが、それはボールを失った直後の囲い込みが機能したからだ。受け身の試合運びができるようになったわけではない。そうしたいつもと違うリズムの中で、手痛いミスがふたつの失点の呼び水となった。
 
 ひとつは遠藤康に背後を取られた宇賀神の、中途半端なポジショニングと応対。もうひとつは判断ミスから鈴木優磨に裏を突かれ、PKを招いた槙野のプレーだ。
 今季の浦和では、ちょっと想像できないミス。だが、それが出てしまったのは、いつもの試合ができていなかったからだ。
 
 後半、状況を好転させようとペトロヴィッチ監督は積極的に交代のカードを切ったが、こちらも機能しなかった。
 
 高木を青木に代えた最初の交代の狙いは、いうまでもなく守備を安定させるため。だがこれも受け身だし、パスの精度やリズムが落ちたことで、ボールを回しながら時間を稼ぐことができなくなった。
 
 交代策では、鈴木を右サイドに投入して一気に攻勢をかけた石井監督の勝ち。ペトロヴィッチ監督は攻撃的で面白いサッカーをするが、交代は上手くない。
 
 鹿島が勝って浦和が負けたチャンピオンシップは、ひと言でまとめると「勝負強いチームが勝負弱いチームに勝った」となる。
 
 ひとや組織は、周りが抱くイメージに無意識に応えようとするものだ。もちろん例外はあるが、できる子だと思われれば期待に応えようとするし、反対にできないと思われると、ほどほどのところに甘んじてしまう。
 
 鹿島の勝負強さも、浦和の勝負弱さも、この周りが抱くイメージと決して無縁ではないはずだ。
 
 今季の浦和はルヴァンカップを制し、年間1位になったものの、敗者としてシーズンを終えることになった。勝負弱い浦和の伝統、これを払拭するのは容易ではない。

取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)

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