年間20ゴールの計算できる新CFを獲得せずに今シーズンに臨んだアーセナルは、ファンの間でも、メディアでも、優勝は難しいと言われていた。筆者も、相変わらずのオリビエ・ジルー頼みでは厳しいと思った口だ。
 
　しかし、最下位のサンダーランドが相手だったとはいえ、一時は追いつかれた嫌な展開を大勝(4-1)で締め括った10月29日の10節後には、新たな１トップの存在が優勝候補としての信憑性の源と巷で理解されている。
 
　その新たな１トップとは、ジルーの故障（すでに復帰）もあり、昨シーズンまでの２列目アウトサイドではなく、開幕から４-２-３-１の先頭へとコンバートされたアレクシス・サンチェスだ。
 
　サンダーランドからの大勝を手繰り寄せた２点目と３点目を奪ったのは、69分にピッチに立ったジルーだが、マン・オブ・ザ・マッチを選ぶならば、１トップでの先発起用に応え、先制点とダメ押し点を決めたA・サンチェスになるだろう。
 
　19分に高さはないがクロスボールに合わせるタイミングと角度が、本職のCFも顔負けのヘディングシュートで先制点を決めれば、78分のチーム４点目は、相手ゴールの眼前で冷静なフィニッシュを見せつける「点取り屋」らしい一撃だった。
 
　ジルーの２ゴールにもビルドアップで絡んだA・サンチェスは、３節ワトフォード戦(○３-１)で今シーズン初のゴールとアシストを記録して以来、10節までに６ゴール・３アシストと好調そのものだ。
 
　アーセン・ヴェンゲル監督は、「まだボールを求めて下りすぎる」と注文をつけているが、実際にはMF陣が意欲的に最前線まで駆け上がる場面が増え、フィジカルではなくクレバーさが売りの１トップを擁する戦い方がチームに浸透しつつある。