松本山雅U-18はなぜ、横浜ユースを破るジャイアントキリングを起こせたのか?

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

2016年10月31日

1年前のリベンジを果たすべく

初の全国8強を決めた松本山雅U-18。インテンシティーの高いサッカーを展開する。写真:川原崇(高校サッカーダイジェスト)

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 感動的な光景が広がっていた。肩を組み一列に並んだ選手たちが、歓喜のステップを踏んでいる。その眼前には数多吊るされた緑色の横断幕と、父兄やサポーターからなる大応援団の笑顔。まるで優勝したかのようなお祭り騒ぎだ。
 
 10月29日、御殿場高原で開催されたJユースカップ3回戦。小雨が降りしきり、ぬかるんだピッチの上で演じられたのは、下馬評を覆すアップセットだった。これまで全国大会でさしたる実績のなかった松本山雅U-18が、優勝候補の強豪、横浜F・マリノスユースを2-1で打ち破ったのだ。

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 長野県リーグ1部に属するチームが、プレミアリーグEASTで優勝争いの渦中にいるチームから勝ちを拾う。それを聞いて大多数のひとは、こんなゲーム展開をイメージするのではないか。圧倒的なタレント力でぐいぐい押し込んでくる敵の猛攻を、自陣深くに引き籠って食い止め、一発のカウンターに活路を見出し、勝利に漕ぎつけたのだろうと。
 
 たしかに横浜は劣悪なピッチコンディションに苦しみ、持ち前のパスワークとスピーディーな仕掛けを繰り出せなかった。決勝点は、ロングカウンターから。力関係を考えれば大金星であり、ビッグサプライズである事実も揺らがない。だが、90分間を通して見れば、どちらに転んでもおかしくないエネルギッシュな攻防戦だった。松本から見てのシュート数、13対15が示す通りだ。
 
 開始早々の5分、松本はいきなりトップレベルの洗礼を浴びる。過度の緊張のためかイレブンの動きは硬く、相手のなすがままにエースFW渡辺力樹(3年)に先制点を許したのだ。「長野県リーグでは味わったことがないボールの動かされ方をした」と、そう振り返るのは臼井弘貴監督だ。立ち上がりは横浜のゴールラッシュの予感さえ漂っていた。
 
 だが、松本は見事にゲームを立て直す。賜正憲(3年)と杉山俊(3年)の2ボランチを軸に守備陣形を整え、ボールをサイドに追い込んでは潰すを繰り返し、横浜の攻撃を分断していく。システムは3-4-2-1で、じつにインテンシティーが高い。中盤をコンパクトに保って全員がハードワークを欠かさず、攻めては長い距離を走破する両ウイングバックをフル活用し、持ち前の機動性能で数的優位を作りながら、素早く敵陣深くまでボールを運ぶ。
 
 そして27分、MF高井悠登(3年)との連携から、杉山が左足で同点弾を決めた。殊勲のゴールを挙げた背番号10は、横浜戦には期するところがあったと振り返る。
 
「去年のJユースカップの初戦でぶつかったのがマリノスでした。結果は0-5の大敗。僕たち2年生が主体のチームで、ベンチに3年生が多いなか、先輩たちの最後の公式戦で不甲斐ない試合をしてしまった。またマリノスと戦えたのも巡りあわせですね。相手のほうが強いのは当たり前。でも、走りと球際だけは絶対に負けない。3年生はみんな、特別な想いをもって臨んでました」

 試合は1-1のまま、一進一退の攻防が続いた。
 
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