C大阪に還元する経験
ブラジルを破るなど躍進を続ける日本代表で光るのはかつてJリーグで輝き、今は欧州で活躍する選手たちの姿である。
一方で現在のJリーグにも地域密着を体現し、クラブのために必死に戦う選手たちがいる。シーズン終盤、そういう選手たちに改めてスポットライトを当てようと、その代表格と言えるC大阪の登里享平のもとを訪れてみた。
「サッカー選手はサッカーだけをしていれば良いわけではない」
川崎フロンターレのレジェンド、中村憲剛もよく口にしていた言葉であり、川崎で根付く文化である。
そんな考え方を継承し、昨季移籍したセレッソ大阪でもピッチ内外でクラブに貢献しようと奮闘している男が、今年3月に史上145人目となるJ1通算300試合を達成した登里享平である。まさにピッチ内外で輝く35歳は、地域の人々との絆を大切するJリーグにおいても貴重な存在と言えるだろう。現在は左膝の手術からの復帰を目指すが、紆余曲折を辿ってきた彼の歩みに改めて焦点を当ててみたい。
(第1回/全3回)
――◆――◆――
積み重ねた戦いの傷が詰まった左膝を撫でながら、いつもの笑顔を向けてくれた。
プロ17年目の35歳。香川西高から入団した川崎で15シーズンに渡ってプレーし、昨季、大きなチャレンジとして地元のC大阪移籍を決断した。悩み抜いた末の川崎を後にする選択は誰をも驚かせたが、あれから約2年、「早いですよね、あっという間ですよ」と語る男は、新天地に即座に慣れたという抜群のコミュニケーション能力を活かしながらC大阪で貴重な役割をこなしている。
何より自身に課しているのは、ピッチ上でのパフォーマンスとピッチ外での盛り上げとともに、リーグを4度、天皇杯を2度、ルヴァンカップを1度、制してきた川崎での優勝経験の還元である。
「優勝したいっていう想いでここに来て、モチベーション高くやらせてもらっています。そのなかで優勝経験のある自分の立場を理解しているからこそ、自らを追い込みながら向き合う。ただ、昨年は結果的に10位。もっともっとやらないといけないと思っています」
登里が加わった昨季のC大阪は設立30周年イヤーを小菊昭雄監督の下で戦い、開幕8戦負けなしと好スタートを切った。悲願のリーグ制覇へ一時は首位にも立った。4-3-3のシステムにおいて“偽SB”として左サイドからポゼッションの軸となる登里のプレーぶりも輝きを放っていたのだ。しかし、12節の大阪ダービーで登里が負傷すると、チームも徐々に失速。様々な意味で不完全燃焼の1年となり、アーサー・パパス監督を迎えた今季もチームは中位を行き来する戦いとなっている。
「優勝を目指したなかで、自分自身を含めてまだまだだなと言いますか、足りないことが多い印象です。チームとして浮き沈みがあり、そういうところが課題かなと。1試合90分のなかでの安定感や、1試合1試合内容が変わってしまう部分などが出てしまっている。そこが合致すれば優勝するチームなんですが...」
一方で現在のJリーグにも地域密着を体現し、クラブのために必死に戦う選手たちがいる。シーズン終盤、そういう選手たちに改めてスポットライトを当てようと、その代表格と言えるC大阪の登里享平のもとを訪れてみた。
「サッカー選手はサッカーだけをしていれば良いわけではない」
川崎フロンターレのレジェンド、中村憲剛もよく口にしていた言葉であり、川崎で根付く文化である。
そんな考え方を継承し、昨季移籍したセレッソ大阪でもピッチ内外でクラブに貢献しようと奮闘している男が、今年3月に史上145人目となるJ1通算300試合を達成した登里享平である。まさにピッチ内外で輝く35歳は、地域の人々との絆を大切するJリーグにおいても貴重な存在と言えるだろう。現在は左膝の手術からの復帰を目指すが、紆余曲折を辿ってきた彼の歩みに改めて焦点を当ててみたい。
(第1回/全3回)
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積み重ねた戦いの傷が詰まった左膝を撫でながら、いつもの笑顔を向けてくれた。
プロ17年目の35歳。香川西高から入団した川崎で15シーズンに渡ってプレーし、昨季、大きなチャレンジとして地元のC大阪移籍を決断した。悩み抜いた末の川崎を後にする選択は誰をも驚かせたが、あれから約2年、「早いですよね、あっという間ですよ」と語る男は、新天地に即座に慣れたという抜群のコミュニケーション能力を活かしながらC大阪で貴重な役割をこなしている。
何より自身に課しているのは、ピッチ上でのパフォーマンスとピッチ外での盛り上げとともに、リーグを4度、天皇杯を2度、ルヴァンカップを1度、制してきた川崎での優勝経験の還元である。
「優勝したいっていう想いでここに来て、モチベーション高くやらせてもらっています。そのなかで優勝経験のある自分の立場を理解しているからこそ、自らを追い込みながら向き合う。ただ、昨年は結果的に10位。もっともっとやらないといけないと思っています」
登里が加わった昨季のC大阪は設立30周年イヤーを小菊昭雄監督の下で戦い、開幕8戦負けなしと好スタートを切った。悲願のリーグ制覇へ一時は首位にも立った。4-3-3のシステムにおいて“偽SB”として左サイドからポゼッションの軸となる登里のプレーぶりも輝きを放っていたのだ。しかし、12節の大阪ダービーで登里が負傷すると、チームも徐々に失速。様々な意味で不完全燃焼の1年となり、アーサー・パパス監督を迎えた今季もチームは中位を行き来する戦いとなっている。
「優勝を目指したなかで、自分自身を含めてまだまだだなと言いますか、足りないことが多い印象です。チームとして浮き沈みがあり、そういうところが課題かなと。1試合90分のなかでの安定感や、1試合1試合内容が変わってしまう部分などが出てしまっている。そこが合致すれば優勝するチームなんですが...」
そのなかで登里は積極的にチームメイトに話しかけるよう心掛けてきた。
「やっぱり意識的に言うようにはしています。怪我をした時も外からチームを見る印象と、中に入って感じる印象は異なる。だからこそ、意見のすり合わせやコミュニケーションはいろいろ考えながらやっています。
言い方が難しいですが、楽しさもありますよ。これまでとは違った自分を発見することを求めてここにきましたし、自分の良い部分だったり、嫌な部分がまた見えてきた。良い意味での葛藤と言いますか、どういった内容をどういったタイミングでチームメイトに伝えるべきなのか、それとも伝えないのか、そういった部分の悩みはやっぱりあります。
ただ、ちょうどいい塩梅を探すと言いますか、チームが変わればやり方も違うのは当たり前で、川崎で培ってきたやり方と、セレッソのやり方を上手く合わせながら、ですかね。優勝するためにはクラブや選手の色が必要で、セレッソにはセレッソの良さがすごくある。だからシーズンを通してのチームの持っていき方などは、やっぱり考えます。
大事なのは一体感と言いますか、チームとしてまとまること。セレッソは仲の良さ、みんながフランクな面を含めて、まとまりやすい環境にありますし、そこをより良い方向に持っていければ、優勝争いにつなげられるはずです。
周囲を“ノセてあげる”と言いますか、そういう方向に持っていくというのは川崎の時も意識していました。選手ってやっぱり調子が悪い日もありますし、落ち込んでいる時だってある。そういう時に味方のスイッチを入れられるような存在でいたいとは考えています。だから客観的にチームを見て、それができるように行動していますが、僕の弱さみたいなものも出てしまう時もあった。結局は順位にもつながってないですからね。
だからこそ自分自身も変わっていかないといけないとも感じています。昨季も連敗や勝てない時期があり、振り返れば、ここ数年の川崎ではあまりなかった状況を経験した。川崎でも若い頃は8連敗とかありましたけどね。僕は連敗はいつか止まると思ってやっていますけど、ただサッカーはチームとして動くわけで、そういう時に、良い方向に持っていけるような存在でありたい。そのためにもプレーは当たり前として、これまでの経験を活かして、人間的に成長する必要があるとも感じています」
「やっぱり意識的に言うようにはしています。怪我をした時も外からチームを見る印象と、中に入って感じる印象は異なる。だからこそ、意見のすり合わせやコミュニケーションはいろいろ考えながらやっています。
言い方が難しいですが、楽しさもありますよ。これまでとは違った自分を発見することを求めてここにきましたし、自分の良い部分だったり、嫌な部分がまた見えてきた。良い意味での葛藤と言いますか、どういった内容をどういったタイミングでチームメイトに伝えるべきなのか、それとも伝えないのか、そういった部分の悩みはやっぱりあります。
ただ、ちょうどいい塩梅を探すと言いますか、チームが変わればやり方も違うのは当たり前で、川崎で培ってきたやり方と、セレッソのやり方を上手く合わせながら、ですかね。優勝するためにはクラブや選手の色が必要で、セレッソにはセレッソの良さがすごくある。だからシーズンを通してのチームの持っていき方などは、やっぱり考えます。
大事なのは一体感と言いますか、チームとしてまとまること。セレッソは仲の良さ、みんながフランクな面を含めて、まとまりやすい環境にありますし、そこをより良い方向に持っていければ、優勝争いにつなげられるはずです。
周囲を“ノセてあげる”と言いますか、そういう方向に持っていくというのは川崎の時も意識していました。選手ってやっぱり調子が悪い日もありますし、落ち込んでいる時だってある。そういう時に味方のスイッチを入れられるような存在でいたいとは考えています。だから客観的にチームを見て、それができるように行動していますが、僕の弱さみたいなものも出てしまう時もあった。結局は順位にもつながってないですからね。
だからこそ自分自身も変わっていかないといけないとも感じています。昨季も連敗や勝てない時期があり、振り返れば、ここ数年の川崎ではあまりなかった状況を経験した。川崎でも若い頃は8連敗とかありましたけどね。僕は連敗はいつか止まると思ってやっていますけど、ただサッカーはチームとして動くわけで、そういう時に、良い方向に持っていけるような存在でありたい。そのためにもプレーは当たり前として、これまでの経験を活かして、人間的に成長する必要があるとも感じています」





















定価:800円(税込)
定価:980円(税込)
定価:1100円(税込)