32歳の自身を認めてくれる、またとないオファー。
所属していたジェフへの想いはある。しかし、風間宏矢の心はほぼ決まっていた。その間、周囲に相談することはなかったという。
「それこそ本当に正式オファーが来るっていう段階の時に、(ジェフの)キャプテンの鈴木大輔さんに少し話したくらいですね。大輔さんは海外経験が豊富ですし、自分がアキレス腱を切った時に大輔さんと一緒にリハビリをし、いろんな話をしていました。だから、オファーをもらった時は大輔さんと『いや本当に来たか、マジか』みたいな会話をしたのを覚えています。それ以外の人には、サインをするまで何があるか分からなかったので、伝えてはなかったです」
もっとも移籍するとなれば、クラブに認めてもらうしかない。折を見て鈴木健仁GM、小林慶行監督に自ら想いをぶつけた。
「もう本当に感謝しかなかったです。チームがダメと言ったら、移籍はできないわけで。代理人ともどういうふうにチームに話そうかと相談した時、自分の口で素直な想いを直接、伝えるしかないと考えました。『このタイミングを逃したら、もうオファーは恐らくない。だから海外に挑戦してみたい』と素直な言葉をぶつけました。ただ、その前の試合で(アキレス腱断裂からのリーグでの)復帰戦としてスタメンで起用してもらったばかり。クラブからどう言われるんだろうと不安でした。でも、自分の気持ちをしっかり伝えると、この3年半の貢献をすごく評価してもらえたんです。
貢献をし続けてくれたからこそ、送り出してあげたいと言ってもらえて...。(小林慶行)監督とも最後ふたりで話をさせてもらいましたが、めちゃくちゃ泣いてくれて...。慶行さんはどちらかと言うと、選手とふたりきりで話をするタイプではないのですが、自分に対する感情など、すべてを話してくれました。その言葉の数々には改めて感謝しかないです。
慶行さんとの会話では僕も泣いちゃいました。それこそ、先日の復帰戦の際、息子を抱いて入場できたのは嬉しかったのですが、あれが結果的にはジェフでの最後の試合になりました。慶行さんは『宏矢が赤ちゃんを抱っこしている姿がどんなに特別か、すごく実感した』と話してくれたんです。アキレス腱断裂など僕のそれまでの苦労を考えたら...と泣いてくれました。その姿を見たら、自分ももう涙を止められなかったですね。
しかも(ホームの磐田戦の前に)セレモニーも設けてもらえました。チームの人にも『セレモニーってなかなかやってもらえるものじゃないよ。だから絶対にやったほうが良い』って言ってもらえて、自分が歩んできたこの3年半が間違いじゃなかったって感じられたのは、すごく嬉しかったです」
クラブにぶつけた素直な想い
チームメイトの前に立ち、移籍の決断を伝えた際にも感動的な場面が訪れた。
「タケさん(鈴木GM)と慶行さんに話をした後、すぐにチームに挨拶をという話になり、自分のことを話す分には泣かなかったです。スラスラ喋って『なんであんなに普通に喋れるんだよ、こっちも泣けないわ』と、ツッコまれましたが、(呉屋)大翔は号泣してくれていました。そのあとのセットプレーミーティング中もずっと泣いていたほどで...。
大翔とは同期で、ロッカーも隣。だからいろんな話をしてきましたが、移籍はどうなるか分からないですし、急に決まったことでもあったので、大翔にも言っていなくて。それで、みんなに挨拶する5分前に『俺、決まったから』と言ったら『は?』みたいな。そして挨拶をさせてもらっている時にずっと鼻をすすっている選手がいるなと思ったら大翔でした。照れ隠しで『俺も歳だ。涙腺がもろくなって』って言っていましたが、あんなに泣いてくれるとは、嬉しかったですね」
「タケさん(鈴木GM)と慶行さんに話をした後、すぐにチームに挨拶をという話になり、自分のことを話す分には泣かなかったです。スラスラ喋って『なんであんなに普通に喋れるんだよ、こっちも泣けないわ』と、ツッコまれましたが、(呉屋)大翔は号泣してくれていました。そのあとのセットプレーミーティング中もずっと泣いていたほどで...。
大翔とは同期で、ロッカーも隣。だからいろんな話をしてきましたが、移籍はどうなるか分からないですし、急に決まったことでもあったので、大翔にも言っていなくて。それで、みんなに挨拶する5分前に『俺、決まったから』と言ったら『は?』みたいな。そして挨拶をさせてもらっている時にずっと鼻をすすっている選手がいるなと思ったら大翔でした。照れ隠しで『俺も歳だ。涙腺がもろくなって』って言っていましたが、あんなに泣いてくれるとは、嬉しかったですね」