［天皇杯 ２回戦］川崎 ４－３ 福島／６月11日／Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

　川崎が福島を４－３で破った天皇杯の２回戦。福島が先制に成功したが、１－１で迎えた後半に川崎が得点を重ね、福島も終盤に連続得点で追いすがったが、川崎に軍配が上がった。

　川崎と、“尖った”攻め勝つサッカーを掲げる福島の試合は、戦前の予想通り点の取り合いとなったが、注目されたのが２年前まで鬼木達監督（現・鹿島監督）の元で川崎のコーチを務め、昨季から指揮官初挑戦として福島を率いる寺田周平監督が等々力に敵将として戻ってきた点だ。

　寺田監督と言えば現役時代はいぶし銀のCBとして活躍しただけに、福島で標榜したアグレッシブなスタイルは周囲が驚いたほど。かつて大木武監督が率いた甲府、サッリ監督が率いたナポリ、そして風間八宏監督、鬼木監督の川崎などにインスピレーションを受けているというが、頼れる先輩として慕ってきた川崎FWの小林悠も初対戦を経て「周平さんがこんな尖ったサッカーをするとは思っていなかった。そこはすごく驚きました」と振り返っている。

　一方で小林は親しみを込めて言葉を紡いだ。

「周平さんは人柄を含めて監督にすごく向いていると思っていました。人間性って監督をやるうえですごく大事で、オニさん（鬼木監督）やシゲさん（長谷部茂利現・川崎監督）ら他の監督もそうですけど、どういう風な人についていきたいかを思わせるのはすごく大切。周平さんはそういう人柄で、絶対に監督に向いているなと思っていました」

【動画】川崎×福島のハイライト

　小林と同じく寺田監督と川崎で時間をともにしてきた大島僚太も戦列に戻ってきたばかりとあってこの日は出番がなかったが、しみじみと話した。

「不思議ですね。（福島のGK）コーチのザワさん（相澤貴志）も僕が入った時に、キーパーでいましたし、すごい不思議な感じはありました」

　一方で寺田監督は「選手があれだけの頑張りを見せてくれたなかで、勝ちに導けなかったのはまだまだ自分の拙さと言いますか甘さを感じた部分。選手には今日の強度、プレッシャー、質の高さを吸収してほしいですし、いろんな感じたことを忘れずにつなげてほしいです」と悔しさを表わしつつ、等々力に戻ってきたことを聞けば、こう返してくれた。

「やっぱり懐かしい思いはありましたし、いろんな人に会えたのは嬉しかったです。ロッカールームが逆だったり、最後に（川崎）サポーターのチャントは勝っている時に聞いていたものだったので、逆だなと思いながら、ただ素晴らしいピッチでしたし、素晴らしいチームと素晴らしい雰囲気で戦えたのはすごく嬉しかったです。

　２年前に福島に行った時に、いつか監督として等々力でフロンターレと戦えたら良いなと思っていたのが、こんなに早く実現するとは思っていなかったですが、だから勝ちたかった。ただ、本当に選手と一緒に良い経験をさせてもらったと思います」

　川崎と福島は昨年２月から業務提携を結んでおり、昨季は期限付き移籍した大関友翔がブレイクし、今季川崎に戻ってからも活躍するなど、人材の行き来は活発になっている。かつて川崎で指揮を執った関塚隆テクニカルダイレクターらを軸に福島としても、川崎と良い関係性を築けているようだ。

　そんな両チームは試合後、互いの健闘を称え合うかのように、それぞれが、相手サポーターの前へ挨拶に向かい、サポーターからは両クラブ名が何度もコールされた。温かな光景だったと言えるだろう。

　ここから川崎はリーグとともに、タイトル獲得へ天皇杯の勝ち上がりも目指し、福島は悲願のJ2昇格を狙う。アグレッシブなスタイルが売りの両クラブが、Jリーグを盛り上げてほしい。そんな想いが増したゲームでもあった。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）

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