骨の髄まで“C・ロナウドのチーム”だったポルトガル

カテゴリ:国際大会

白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

2016年07月11日

あんなC・ロナウドを見た記憶は一度もない。

代表レベルで悲願の初タイトルを獲得したC・ロナウド。12年前の雪辱を晴らした。写真:Alberto LINGRIA

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 ポルトガルの命運は尽きたー―。痛みに顔を歪め、涙を流しながら担架で運ばれるクリスチアーノ・ロナウドを見て、誰もがそう思ったことだろう。
 
 7月10日のEURO2016決勝。開催国フランスと対峙したポルトガルは、8分に想定外のアクシデントに見舞われる。中盤右サイドでディミトリ・パイエの激しいチャージを受けたC・ロナウドが、左膝を負傷したのだ。
 
 なんとかピッチに戻るも明らかに足を引きずっており、17分には再び自ら倒れ込む。20分、今度はテーピングを巻いて入ってきたが、2分後には交代を直訴。プレーが切れる前に訪れた空中戦でもまったくジャンプできないような状態で、直後にはキャプテンマークを投げつけて、緑の芝生の上に横たわる。そして25分、担架で運ばれて、リカルド・カレスマとの交代を余儀なくされた。
 
 ポルトガルは自他ともに認める“C・ロナウドのチーム”だ。今大会は怪我明けでベストコンディションとは言い難かったが、準決勝までの全6試合にフル出場して3ゴール・3アシスト。チーム総得点(8)の大半に絡んできた。
 
 前線で2トップを組んできたナニが好調で、中盤にはレナト・サンチェスという新星も台頭し、リカルド・カレスマもスーパーサブとして結果を残してきたが、それもこれもC・ロナウドの存在が大前提。チームメイトはこの背番号7が敵を引き付けるからこそスペースを得るし、存在そのものから有形無形のアドバンテージを得てきた。フェルナンド・サントス監督が「計り知れないくらい重要な選手」と語れば、選手たちも事あるごとに「彼を信じている。付いていく」と繰り返した。
 
 そんな唯一無二のキャプテンが、この大一番で何の仕事もせずにわずか25分間でピッチを去ったのだ。ポルトガルのベンチやサポーターが陣取るスタンドでは誰もが項垂れており、記者席も喧々諤々の騒ぎとなった。
 
 しかし、ポルトガルはここから驚異的な粘りを見せる。フランスにほぼ一方的に攻め込まれながらも、CBペペとGKルイ・パトリシオを中心に90分間を何とか耐え抜き、延長戦へと望みを繋いだのだ。
 
 延長戦が始まる前、左膝にテーピングを巻いて足を引きずるC・ロナウドは、ベンチ前で休憩する仲間たち一人ひとりに声をかけて回っていた。
 
 そして、試合が再開すると、F・サントス監督と同じくテクニカルエリアのぎりぎり、時にはそれを飛び出して仲間たちに大声で指示を送り、プレーの一つひとつに一喜一憂。109分にエデルの決勝ゴールが決まると、目に涙を溜めて大喜びした。クラブで代表でも、あんなC・ロナウドを見た記憶は一度もない。
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