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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の七十八「欧州移籍で成功を掴む覚悟はあるか?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年07月07日

冒険心こそフットボーラーを魅力的に輝かせる。

国内最後の試合でG大阪サポーターに挨拶をする宇佐美。欧州再挑戦となるだけに、本人も並大抵の覚悟ではないはずだ。(C) SOCCER DIGEST

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 つい先日のことだ。日本代表MFである山口蛍が、ブンデスリーガのハノーファーからJリーグのセレッソ大阪へ復帰し、7月3日の熊本戦で再びJのピッチに立った。わずか半年での古巣帰還。海外でのプレーはもう懲り懲りな様子だ。
 
 その一方、同じく代表の宇佐美貴史はドイツ・アウクスブルクへの移籍を決意。宇佐美は19歳の時に2シーズン、欧州でプレーするも撤退を余儀なくされており、これが再挑戦となる。
 
 今さらだが、欧州挑戦の意義はどこにあるのだろうか?
 
 Jリーグでも、十分な給与は得られる。ポジションを掴み取り、活躍を続けることによって、数千万円から億近い年俸を稼げる。給料の未払いは基本的に考えられないし、練習施設も充実し、ほとんど不便はない。ステイタスも低くはないだろう。日本でプレーする限り、語学の問題もないし、文化道徳も共有しているだけに大きな問題はない。ファンは温かく、スタッフの気遣いも至れり尽くせりだ。
 
 翻って、欧州では何ごとも不便である。給料未払いのようなケースも、実際に数多く起こっている。クラブの施設は多くが古めかしく、存外、粗末だったりする。異国だけに言葉の障害が付きものだし、生活のリズムや習慣などの違いに悩まされることもある。ロッカールームで孤立することもあり得る。プレーリズムの順応も大変で、パスが来ない、という差別を受けるかもしれない。
 
 欧州のトップクラブに関して言えば、Jリーグよりも年俸がいいが、定位置争いは熾烈で常時出場できる保証はない。結果が出なければ、情状酌量の余地なくお払い箱の運命。代表と疎遠になることも考えられる。
 
 にもかかわらず、どうして日本人フットボーラーは海を渡ろうとするのか?
 
 それは筆者が取材してきた選手たちの証言を総合すれば、「純粋無垢な冒険心に突き動かされるから」に他ならない。なにを甘ったれた、ふざけたことを、と思うだろうか? しかし欧州には、Jリーグよりも明らかにレベルが高く、競争が激しいリーグがある。そこにいる猛者たちを味方にし、強大なる敵に挑みかかる――。フットボーラーたちは、そこにたまらない陶酔を感じてしまうのだ。
 
「メッシを相手にどこまで戦えるのか?」
 
 そんな子どもじみた好奇心を満たすため、彼らは海を渡る。フットボーラーとしての腕比べと言い換えてもいい。ばかげているかもしれないが、原点はそこにある。成功したら、給料や待遇や知名度も上がるが、それは後から付いてくる。誰よりも上手くなりたい、という衝動を抑えきれないのだ。
 
 そして冒険心こそ、フットボーラーを魅力的に輝かせる。できないかもしれない、という挑戦にためらいなく踏み込める姿に、人は憧れる。その熱量は選手に反射し、高揚感となって想像を超えたプレーを生むのだ。
 
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