［ACLエリート第８節］川崎 ２－０ セントラルコースト・マリナーズ／２月18日／等々力陸上競技場

　ACLEですでにラウンド16進出を決めていた川崎は、最終戦としてオーストラリアのセントラルコースト・マリナーズとホームで対戦し、FWエリソン、マルシーニョのゴールで２－０で勝利を収めた。

「声がよく出ているね」

　ハーフタイム、あるカメラマンに声を掛けられた。

　長谷部茂利新監督体制としての公式戦３試合目、ともに４－０で制した直近の２試合とは大きくメンバーを入れ替えて臨んだこの一戦で、ひときわ大きな声を響かせている男がいたのだ。

　ゴールマウスを守ったのは2016年のゲーム以来、９年ぶりに公式戦のピッチに立った安藤駿介だ。アカデミー育ちで2009年のトップ昇格後、13年の湘南へのレンタルを除き、長年チームを支えてきた功労者である。

　川崎所属16年目で公式戦の出場は計９試合（湘南では15試合に出場）。それでも常に真摯にトレーニングに臨み周囲の模範となり、“あんちゃん”の愛称で親しまれてきた。
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　今季はGK山口瑠伊が２試合連続で先発していた一方、長くレギュラーを務めてきたチョン・ソンリョンが前日に道路交通法違反（進路変更禁止違反）により検挙され、運転免許証が失効していたことも判明。公式戦１試合の出場停止がクラブから課され、ルーキーのイ・クンヒョンは負傷離脱中。

　そのなで回ってきた出番に安藤は冷静に対応してみせた。

「背伸びせずにやろうかなと。自分のやってきたこと以外は出ないと思うので、それを100出せれば良いかなと考えていました。（９年は）長かったですが、このチームでやり続けてきたことが今日の試合につながったので、どっかに行って帰ってきたとかではなくて、ずっとここでやり続けて出場のチャンスを得られたのが自分にとって大きかったです」

　試合後にはサポーターからチャントを送られ、「感激はしています。試合が終わったあとの声援もありがたかったです」と笑顔を見せる。

　もっとも34歳は「自分にとっては大きな１試合ですが、想いに浸っている場合じゃないとも思います」とも語る。

　改めてGKとは特殊なポジションで、４人体制を取られることが多いが、ピッチに立てるのはひとりのみ。しかも、一度、レギュラーが定まると、交代も起こりにくい

　いつくるか分からない出番に備え、準備をし続ける。それでも１シーズンで一度もピッチに立てない状況だって往々にしてある。

　それでも安藤は「自分のやれることを100パーセントやる。そうすれば必然と良い準備ができると思う。そこはやってきたつもりです」と胸を張る。常に真摯に練習に臨み続けた姿勢はまさに“プロフェッショナル”と言えるだろう。

　華やかなスポットライトが当たる世界の裏には、地道にチームを支え続ける男たちがいる。時には彼らが主役になっても誰も文句は言わない。いやこういう時こそ、日々の献身へ誰もが賛辞を送るべきである。

　その意味で、安藤がスタジムを出る際に、スタッフたちが自然と並び、拍手とともに花道を作ったのは、何よりの誉れだろう。まさに感動的なシーンだった。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）
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