主力選手を温存して臨み、無名集団に最悪のかたちで敗北…。
EURO96に臨んだアリーゴ・サッキ率いるイタリアは、予選の時点で何度も批判に晒されてきた。
ユーゴスラビアから独立してから初のメジャーイベント参加となったクロアチアの後塵を拝して予選2位。この大会から出場枠が16に倍増したことで、辛くも本大会行きのチケットを手に入れたのである。
最終メンバーの決定においても、人々はサッキに異論を唱えた。
チャンピオンズ・リーグ制覇を果たしたばかりのユベントスのエース、ジャンルカ・ヴィアッリや、直前のセリエAで3度目の得点王に輝いたジュゼッペ・シニョーリ、そしてイタリアの至宝、ロベルト・バッジョが外れたからだ。
それでも、本大会ではロシアとの初戦で2-1の勝利。ピエルイジ・カジラーギの2ゴールで勝点3を奪ったイタリアは内容的にも危なげなく、初戦でチェコを一蹴(2-0)したドイツとともに、順当に準々決勝へ進むものと思われていた。
その確信はイタリアにもあったようだ。当時、欧州でもあまり名の知れた選手がいないチェコに対し、サッキはロシア戦から5人もメンバーを入れ替えて試合に臨んだのである。そのなかにはカジラーギ、そして彼と好連係を見せたジャンフランコ・ゾーラも含まれていた。
6月14日、リバプール・アンフィールドのピッチに立ったイタリアの面々は、やや気が抜けていた。そんな彼らに、チェコがいきなり冷や水を浴びせかける。開始4分、まだ短髪だった若いパベル・ネドベドがゴールネットを揺らしたのだ。
右タッチラインでのスローイン→ボールキープ→センタリング→ネドベドのシュートというチェコの一連のプレーに対し、イタリアの選手はプレッシャーが緩く、対応も遅かった。
堅守をウリにするはずのチームが、早くも失点。しかし、これで少し気を引き締め直したイタリアは、18分に大会初スタメンのエンリコ・キエーザが無理な体勢からのシュートで同点ゴールを挙げた。
ここから勢いに乗り、逆転するかと思われたイタリアだが、やはりどこか動きは緩慢であり、一方のチェコはバイタリティ溢れるプレーで、積極的に格上チームのゴールに迫ろうとする。
次の1点は35分に生まれた。チェコの勝ち越し点、そしてあまりに早すぎる決勝点だ。右サイドから入ったクロスをラデク・ベイブルがダイレクトで叩き、ユベントスのGKアンジェロ・ペルッツィの牙城を破ったのである。
これで、ようやく目が覚めたイタリアだったが、メンバーを落としていたチームは思うような反撃を見せられず、時間とともに焦りが出ると、攻守でチグハグなプレーをさらけ出し、同点のゴールは遠くなる一方だった。
楽勝のはずが、あまりに痛い敗北。計算していた勝点3を得られなかったイタリアは、他力本願の状態でドイツ戦を迎えることとなってしまった。
そして5日後、この大会で3度目の優勝を飾るドイツに、浮足立ったイタリアは1点を奪えずに敗退が決定。間もなくしてサッキ・アッズーリは崩壊を迎えた。
一方、チェコはここから決勝に進出して世界を驚かせ、以降は豊富なタレントが次々に欧州のビッグクラブに進出。そしてチームは強豪国のひとつとして認知され、どの大会でも注目を浴びる存在となっていった。
◎6月14日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1972年ベルギー大会
準決勝
西ドイツ 2-1 ベルギー
ソ連 1-0 ハンガリー
◇1984年フランス大会
グループステージ
ドイツ 0-0 ポルトガル
ルーマニア 1-1 スペイン
◇1988年西ドイツ大会
グループステージ
西ドイツ 2-0 デンマーク
イタリア 1-0 スペイン
◇1992年スウェーデン大会
グループステージ
フランス 0-0 イングランド
スウェーデン 1-0 デンマーク
◇1996年イングランド大会
グループステージ
チェコ 2-1 イタリア
ポルトガル 1-0 トルコ
◇2000年ベルギー・オランダ大会
グループリーグ
イタリア 2-0 ベルギー
◇2004年ポルトガル大会
グループリーグ
デンマーク 0-0 イタリア
スウェーデン 5-0 ブルガリア
◇2008年オーストリア・スイス大会
グループステージ
スペイン 2-1 スウェーデン
ロシア 1-0 ギリシャ
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
グループステージ
イタリア 1-1 クロアチア
スペイン 4-0 アイルランド
※日付は全て現地時間
ユーゴスラビアから独立してから初のメジャーイベント参加となったクロアチアの後塵を拝して予選2位。この大会から出場枠が16に倍増したことで、辛くも本大会行きのチケットを手に入れたのである。
最終メンバーの決定においても、人々はサッキに異論を唱えた。
チャンピオンズ・リーグ制覇を果たしたばかりのユベントスのエース、ジャンルカ・ヴィアッリや、直前のセリエAで3度目の得点王に輝いたジュゼッペ・シニョーリ、そしてイタリアの至宝、ロベルト・バッジョが外れたからだ。
それでも、本大会ではロシアとの初戦で2-1の勝利。ピエルイジ・カジラーギの2ゴールで勝点3を奪ったイタリアは内容的にも危なげなく、初戦でチェコを一蹴(2-0)したドイツとともに、順当に準々決勝へ進むものと思われていた。
その確信はイタリアにもあったようだ。当時、欧州でもあまり名の知れた選手がいないチェコに対し、サッキはロシア戦から5人もメンバーを入れ替えて試合に臨んだのである。そのなかにはカジラーギ、そして彼と好連係を見せたジャンフランコ・ゾーラも含まれていた。
6月14日、リバプール・アンフィールドのピッチに立ったイタリアの面々は、やや気が抜けていた。そんな彼らに、チェコがいきなり冷や水を浴びせかける。開始4分、まだ短髪だった若いパベル・ネドベドがゴールネットを揺らしたのだ。
右タッチラインでのスローイン→ボールキープ→センタリング→ネドベドのシュートというチェコの一連のプレーに対し、イタリアの選手はプレッシャーが緩く、対応も遅かった。
堅守をウリにするはずのチームが、早くも失点。しかし、これで少し気を引き締め直したイタリアは、18分に大会初スタメンのエンリコ・キエーザが無理な体勢からのシュートで同点ゴールを挙げた。
ここから勢いに乗り、逆転するかと思われたイタリアだが、やはりどこか動きは緩慢であり、一方のチェコはバイタリティ溢れるプレーで、積極的に格上チームのゴールに迫ろうとする。
次の1点は35分に生まれた。チェコの勝ち越し点、そしてあまりに早すぎる決勝点だ。右サイドから入ったクロスをラデク・ベイブルがダイレクトで叩き、ユベントスのGKアンジェロ・ペルッツィの牙城を破ったのである。
これで、ようやく目が覚めたイタリアだったが、メンバーを落としていたチームは思うような反撃を見せられず、時間とともに焦りが出ると、攻守でチグハグなプレーをさらけ出し、同点のゴールは遠くなる一方だった。
楽勝のはずが、あまりに痛い敗北。計算していた勝点3を得られなかったイタリアは、他力本願の状態でドイツ戦を迎えることとなってしまった。
そして5日後、この大会で3度目の優勝を飾るドイツに、浮足立ったイタリアは1点を奪えずに敗退が決定。間もなくしてサッキ・アッズーリは崩壊を迎えた。
一方、チェコはここから決勝に進出して世界を驚かせ、以降は豊富なタレントが次々に欧州のビッグクラブに進出。そしてチームは強豪国のひとつとして認知され、どの大会でも注目を浴びる存在となっていった。
◎6月14日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1972年ベルギー大会
準決勝
西ドイツ 2-1 ベルギー
ソ連 1-0 ハンガリー
◇1984年フランス大会
グループステージ
ドイツ 0-0 ポルトガル
ルーマニア 1-1 スペイン
◇1988年西ドイツ大会
グループステージ
西ドイツ 2-0 デンマーク
イタリア 1-0 スペイン
◇1992年スウェーデン大会
グループステージ
フランス 0-0 イングランド
スウェーデン 1-0 デンマーク
◇1996年イングランド大会
グループステージ
チェコ 2-1 イタリア
ポルトガル 1-0 トルコ
◇2000年ベルギー・オランダ大会
グループリーグ
イタリア 2-0 ベルギー
◇2004年ポルトガル大会
グループリーグ
デンマーク 0-0 イタリア
スウェーデン 5-0 ブルガリア
◇2008年オーストリア・スイス大会
グループステージ
スペイン 2-1 スウェーデン
ロシア 1-0 ギリシャ
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
グループステージ
イタリア 1-1 クロアチア
スペイン 4-0 アイルランド
※日付は全て現地時間