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「強い選択ができるメンタルになった」スパルタ三戸舜介が“オランダ半年間”で実感するリアルな成長。「五輪のゴールで自信も少しついた」【現地発】

カテゴリ:ワールド

中田徹

2024年08月26日

ホームでの“ダービー”に82分から登場

オランダの地で日進月歩の進化を続ける三戸。(C)Getty Images

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 今年の2月、スパルタの三戸舜介は初めてフェイエノールトとの『ロッテルダム・ダービー』を戦った。4万7500人で埋まったデ・カイプのピッチはカクテル光線を浴びて幻想的に輝いていた。響き渡るフェイエノールトサポーターの途切れぬ歌声。そのなかで三戸は72分間プレーしたものの、ほとんど何もできぬままベンチに退いた。それでもオランダに来てまだ1か月余りの21歳は、感情の高ぶりが鎮まらなかった。
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「フェイエノールト戦はチームとしての差も感じましたし、個人としての差も感じました。あらためてチャンピオンズリーグに出るチームだなと感じました。ああいうチームにやっぱり勝ちたい。しかし何と言ってもあのスタジアムの雰囲気がすごかった。あれはすごかったですね。あの雰囲気は初めて。これまで感じたことのないものでした。人がいっぱい入ってましたし、一気に“アウェー感”を感じました。プレーしていて鳥肌が立ちました。一気にワーってなる瞬間がもうたまんない。スッゲーってなりますね」(今年2月の三戸)

 8月25日、再び『ロッテルダム・ダービー』が欧州一の港町に訪れた。今回はスパルタのホーム、ヘット・カステールでの対決だ。ここは収容1万1000人ほどの小ぶりな作りだが、1888年創設という古豪の誉れ高きレンガ作りの壁と、お城のような瀟洒な建物がバックスタンド側に設けられている。

 三戸は1-1の82分から登場した。フェイエノールトに退場者が出たため、スパルタは数的優位に立っていたが、実力も規模も格上のフェイエノールトが勝ち越しゴールを狙って攻勢に出ている時間帯だった。そんなとき、三戸の爆発的なスプリントは活きる。

 86分、GKオライがボールをキャッチすると、間髪入れずに前線へボールを蹴り込んだ。スパルタは3季に渡ってオライからの速攻を武器にしており、今年に入ってチームに加入した三戸も「GK始動のカウンター」を熟知している。ハーフウェーラインを越したところでオライのパスを受けた三戸は長駆、フェイエノールトゴールを目ざしたが、ペナルティエリア内でオランダリーグ最高のCBハンチュコにストップされた。

「今日も1本裏抜け(86分のドリブルのシーン)とかありましたけど、ゴールまで持っていきたかった。 そういう少ないチャンスは(活かさないといけない)…。今日は、相手が10人だったし、勝てるチャンスだった。もったいなかった」

 その2分後に三戸は右サイドライン際でマーカーをフェイントで翻弄し、ファールを受けたシーンがあった。三戸のトリッキーな足技にバックスタンドは沸きに沸いた。この時、三戸と対峙したのはブラジル人左ウインガー、パイションだった。

「背がちっちゃい人だったんで負けたくなかったです。同じ背格好で、このレベルでやってる選手なのですごい刺激になります。『そういう人には負けたくない』。そういう気持ちはありました」
 
 三戸がパイションに削られた1対1は、小柄なテクニシャン同士の意地の衝突だった。

 164センチの三戸に対し、ブラジルのコリチーバでプレーしていたパイション(24歳)は168センチ。ふたりに共通するのは韋駄天・トリッキーなウインガーでありながら、中に絞ってライン間でボールを受けるのが上手く、しかも強烈なミドルシュートを秘めていること。ビルドアップなら三戸のほうが、キックテクニックならパイションのほうが上か。オランダリーグにおける選手の格という点では、フェイエノールトでレギュラーのパイションのほうが現時点では間違いなく上だ。

 そんなパイションも23年1月にフェイエノールト・デビューした頃はドリブルで仕掛けることしかできなかった。その後、彼はアルネ・スロット(現リバプール監督)の下で気の利いたポジショニングで味方を活かし、そのことで自分も活きるという術を覚えた。パイションは現在24歳。9月に22歳の誕生日を迎える三戸にとって、これ以上ない目標になるはずだ。
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