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【今日の誕生日】5月10日/EURO2000決勝の奇跡! 土壇場で母国を救った英雄――ヴィルトール(元フランス代表)

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年05月10日

攻撃の天才は左右のウイングの他、前線で点取り屋もこなした。

類稀なスキルと身体能力を活かし、攻撃で存在感を示し続けたヴィルトール。明るい性格で、チームの盛り上げ役にもなった。代表での通算記録は92試合出場26得点。 (C) Getty Images

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EURO84準決勝、チームを決勝に導く貴重な2つのゴールを決めたドメルグ。ちなみに彼の、代表での通算記録は9試合出場“2得点”である。 (C) SOCCER DIGEST

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◇シルバン・ヴィルトール:1974年5月10日生まれ フランス・ヌイー=シュル=マルヌ出身
 
 2000年7月2日、オランダ・ロッテルダムのデ・カイプ。EURO2000決勝はイタリアがマルコ・デルベッキオの先制点を守りながら、後半アディショナルタイムに突入した。
 
 フランスは準決勝までのような迫力あるサッカーをなかなか見せられず、エースのジネディーヌ・ジダンも鳴りを潜め、ビハインドを返せないまま試合終了の時を迎えるかと思われた。
 
 時計が94分を指し示した時、イタリアDFのクリアが小さくなったところを胸トラップし、ペナルティエリア内に侵入した選手がいた。シルバン・ヴィルトールだ。彼は左サイドの角度のない位置から、名手フランチェスコ・トルドが守るゴールを破った。
 
 劇的な展開によって突入した延長戦では、気落ちしたイタリアをフランスが攻め込み、103分にダビド・トレゼゲがゴールデンゴールを決めて、史上初のワールドカップ→欧州選手権(EURO)の連続優勝を果たした。
 
 九分九厘、負けゲームだった試合を振り出しに戻す殊勲の同点ゴールを決めたヴィルトールは、もちろん英雄として大きな称賛を受けることになった。
 
 世界一のイタリアの守備を切り裂いた彼のキャリアは、1993年にレンヌでスタート。2部リーグで2シーズンを過ごした後、1部リーグでの3シーズンは主力としてプレーし、95-96シーズンには初めて2桁得点(15点)をマークした。
 
 97年夏、ボルドーに移籍。2シーズン目には22ゴールを挙げてリーグ得点王に輝くとともに、チームを12年ぶりのフランス王者に導き、99年のリーグMVPにも選出された。これでビッグクラブからの注目度はさらに高まり、00年、イングランドのアーセナルに迎え入れられる。
 
 ここではファーストシーズンから活躍。スピードを活かせる中盤右サイドを主戦場としながら、左右両翼でプレーでき、さらに前線に立って高い決定力を見せ付けられるユーティリティーぶりが、同胞の智将、アーセン・ヴェンゲルから重宝された。
 
 1シーズン目にティエリ・アンリに次ぐチーム2位の得点(8点)を記録し、2シーズン目は初のプレミアリーグ制覇を経験。3シーズン目は序盤戦で攻撃を牽引し、最後のシーズンとなった03-04シーズンには再びリーグ制覇を成し遂げた。
 
 翌シーズン、母国に帰り、それまで国内リーグを3連覇していたリヨンに加入。円熟期を迎え、あらゆる攻撃のプレーを高度にこなせるようになっていたヴィルトールの加入により、リヨンはさらに強化され、彼の在籍した3シーズン全てでリーグ優勝を果たした。
 
 33歳で自らのキャリアの原点であるレンヌに復帰して2シーズンを過ごした後、ヴィルトールはマルセイユ、メッツ、ナントと渡り歩き、12年夏にユニホームを脱いだ。
 
 フランス代表としては、99年2月にウェンブリーでのイングランド戦で初キャップを刻み、以降、ワールドカップ2回(02年、06年)、欧州選手権2回(00年、04年)に出場。06年ドイツW杯では決勝戦(対イタリア)まで進み、PK戦では1人目として成功させた。
 
 01年、03年のコンフェデレーションズ・カップ優勝に貢献したヴィルトールだが、やはり最大のタイトルは前述のEURO2000だ。そして決勝戦、後半終了間際の同点弾は、母国を窮地から救い、さらに延長戦での勝利に導くものとなる、彼にとっては最高の勲章となった。
 
 ところで、過去にフランス代表がビッグタイトルを獲得したコンペティションを振り返ると、チームが困難な状態にあった時、必ず救世主が出現した。
 
 最初の自国開催となったEURO84では、準決勝のポルトガル戦、延長戦前半で相手に勝ち越しゴールを許して絶体絶命のピンチに陥った時、これを救ったのは、後半残り5分で同点ゴールを決めたDFジャン=フランソワ・ドメルグだった。
 
 奇しくもこの試合日が27度目の誕生日だった彼は、前半の25分にも強烈なFKで先制点を挙げていた。ちなみに延長後半、同点に追い付いた後、終了間際に勝ち越しゴールを挙げたのは、“将軍”ミシェル・プラティニである。
 
 98年フランスW杯では、まず決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦、ジダンを出場停止で欠いた状態で試合は無得点のまま延長戦に入り、後半9分にDFの要ロラン・ブランが決勝ゴールを決めた。PK戦に入っていれば、名GKホセ・ルイス・チラベル擁するパラグアイが有利といわれていた。
 
 続く準々決勝イタリア戦では無得点のままPK戦に突入し、ここではデメトリオ・アルベルティーニのシュートを止めたGKファビアン・バルテスと、ルイジ・ディ・ビアージョのシュートをはね返したクロスバーが、フランス国民にとっての英雄となった。
 
 そして準決勝。クロアチアのダボル・シュケルに先制ゴールを許したフランスを救ったのは、この試合2ゴールのリリアン・テュラム。EURO84準決勝同様、チームを救ったのはDFだった。
 
 さて来るEURO2016で、新たなフランスの救世主は誰となるだろうか。そして、その選手は開催国にアンリ・ドロネー杯をもたらす英雄にもなるだろうか?

見る者を感動させた、攻めるフランスと堅守のパラグアイが展開した120分間の戦い。決定力を欠いたフランスだったが、最後はトレゼゲのアシストを受けたブランの右足がチラベルの牙城を崩した。 (C) Getty Images

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本人も、チームメイトも、クロアチアの選手も驚いたテュラムの2ゴール。ちなみに彼もドメルグ同様、代表での通算得点は2だった。これ以外にも、フランスW杯とEURO84と不思議なぐらい共通点が多い。 (C) Getty Images

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