【現地発】悲願の欧州制覇に王手をかけた闘将シメオネと「チョリズモ」の体現者たち

カテゴリ:ワールド

白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

2016年05月06日

「勝利以外には興味がない」「仲間のために死ねるんだ」――。

ベンチ前の「シメオネ劇場」は見る者を楽しませるが、その指示は細かく的確であり、派手なアクションも計算尽くされたところがある。熱い魂と冷静な頭脳を持つ指揮官だ。(C)Getty Images

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 バイエルンとアトレティコ・マドリーが対峙した5月3日のチャンピオンズ・リーグ(CL)準決勝セカンドレグ。キックオフ前にアトレティコの先発イレブンが紹介されると、アリアンツ・アレーナのホーム・サポーターはブーイングを飛ばした。
 
 ヨーロッパのサッカースタジアムではお決まりの光景。しかし、この日はひとつだけ見慣れないシーンに出くわした。
 
 最も音量が大きかったのは、フェルナンド・トーレスでもアントワーヌ・グリエーズマンでもディエゴ・ゴディンでもなく、ディエゴ・シメオネに向けられたそれだったのだ。
 
 バイエルン・ファンも分かっていたのだろう。アトレティコでもっとも厄介なのは、選手ではなく監督なのだと――。
 
「勝利だけを目指している。それ意外には興味がない」
 
 前日会見でそう言い放ったシメオネは、キックオフ開始からずっとテクニカルゾーンのギリギリの位置でオーバーリアクションを見せながら叫び続けた。
 
 37分にはファウルの判定を巡って相手ベンチと一悶着を起こせば、試合終了間際には時間稼ぎの交代カードが即座にピッチに送り出されなかったことで、スタッフの肩を押して怒りを露わに。まさに闘将だった。
 
“チョロ”の愛称で知られるシメオネのこうしたファイトする気持ち、何としてでも勝利を掴もうとする狡猾さは最近、「チョリズモ」としてヨーロッパで話題を呼んでいる。
 
 アトレティコの選手たちは、このチョリズモを文字通り体現。それが、バイエルンを倒すうえで最大の原動力となった。
 
 前日会見で「僕らは本当の意味で一枚岩だ。隣の仲間のために死ねるんだ」と言い放ったF・トーレスは、その言葉通り、ずっと前線からのチェイシングを繰り返し、身体を張ってボールを収めた。
 
 ゴディンやホセ・ヒメネスらDFとコケやサウール・ニゲスらMFたちは、尋常ではない球際の強さを見せ、ファウルすれすれ、時にはファウルを犯してでも、敵アタッカー陣を封じた。
 
 自陣で引き気味に最終ラインを敷き、少ない手数でフィニッシュを狙う戦術的狙いはもちろん、試合の大半で守勢に回りながらも動じない精神的なタフネス、交代時や故障時、セットプレーの際の巧みな時間稼ぎ……。
 
 そして、ペナルティーエリア外で倒れたにもかかわらず、好演技でPKを得た84分のトーレスのプレー(自ら蹴ったPKを止められたが……)なども、チョリズモのひとつと言えるだろう。
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