「（昨年末の）サントスの会長選挙で勝利を収めた翌日、彼から電話があった。私を祝福してくれた後、こう言うんだ。『会長、僕が戻るときは背番号11を用意してください』とね。もちろん、即座に了承したさ」
 
　満面の笑みを浮かべて語ったのは、マルセロ・テイシェイラ、59歳。本職は地元のテレビとラジオのオーナーにして大学の学長だ。そして「彼」とは、アル・ヒラルに所属するブラジル代表のFWネイマールのことである。
 
　テイシェイラは1991年から93年まで、そして2001年から09年までサントスFCの会長を務め、03年にクラブのアカデミーに加わったネイマールの成長を見守ってきた人物だ。
 
「来年6月末にアル・ヒラルとの契約が満了した後、彼は戻ってくる。ここで世界中のファンを魅了するプレーを披露し、彼にとってはおそらく最後となる2026年ワールドカップでの優勝を目指す」
 
　テイシェイラは会長選挙前、リオのネイマールの別荘を訪れて、本人、そして代理人を務める父親と面談。地元メディアは、「二人にサントス復帰をもちかけ、基本的な了承を取り付けた」と報じた。

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　ただし、23年シーズンのブラジルリーグ１部でサントスは20チーム中17位に沈み、クラブ史上初めて２部降格を余儀なくされた。「もし24年シーズンに１部に返り咲けなければ、ネイマールの復帰はありえない」と見られている。
 
　テイシェイラは、Ｊ２のＶ・ファーレン長崎が契約を延長したと主張するファビオ・カリーレ監督を、昨年12月に指揮官として招聘した。長崎は、「二重契約」として違約金の支払いを求め、FIFAに提訴している。ブラジルの大多数のクラブの会長と同様、海千山千の人物であり、「ネイマール父子との親密な関係をアピールしたのは、会長選挙を有利に運ぶため」という見方が一般的だ。
 
　ブラジルリーグ2部に降格したサントスが、ネイマールに高給を支払えるとは思えない。ブラジルのメディアは、「来年中頃までにネイマールへの報酬を肩代わりしてくれるスポンサーを見つけられるかどうか。サントスがネイマールを復帰させるためのこれが最低条件」と報じている。
 
文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 
 
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