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「スペシャル・ワン」発言に魅了されて…モウリーニョ時代から足を運ぶチェルシー金曜会見の裏話【英国人コラム】

カテゴリ:連載・コラム

スティーブ・マッケンジー

2023年12月09日

まさに当意即妙。軽妙洒脱なサッリが返した一言とは?

チェルシーの金曜会見に行くのがモウリーニョ時代からの習慣だ。今シーズンから指揮を執るポチェティーノ(写真)はどんな名言を残すのか。(C)WORLD SOCCER DIGEST

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 プレレミアリーグは金曜日に始まる。試合に先駆けての記者会見、プレマッチ・プレスカンファレンスが金曜に開かれるからだ。
 
 会見はざっとこんな要領だ。まず、チームからの出席者は監督ひとり。選手は出てこない。選手の出席が義務付けられているのはUEFA主催のチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグで、プレミアリーグは選手に義務はない。
 
 金曜会見は怪我人の報告から始まるのが一般的だ。今週の練習を休んだのは誰と誰で、どんな状態か。明日の試合に出られそうか、そうでないか。欠場中の選手について、進展があるのか、ないのか。復帰はいつになりそうか。そんなアナウンスメントがまずあって、記者との質疑応答に入っていく。もちろん、故障者についての情報開示は、監督やクラブによって程度がまったく異なる。詳細に伝える監督もいれば、肝心なところは秘匿する監督もいる。
 
 集まる記者はいつものメンバーだ。チームに張り付いて取材する、各媒体のいわゆる番記者たちが顔を揃える。
 
 質疑応答で見せつけられることになるのが、メディアのヒエラルキーだ。質問をする順番が割と厳格に決まっている。最初はテレビ、次がラジオで、新聞、そしてウェブやフリーランスと続く。テレビの中でも、“王様”は放映権を持っている『スカイスポーツ』。物を言うのはやっぱりカネだ。新聞は、クオリティーペーパー(高級紙)から大衆紙に行って、サンデーペーパー(新聞の日曜版)が締めくくる。
 
 そんなに頻繁ではないが、会見後に時折あるのが、1社1人ずつ4~5人の記者が招かれる監督との懇談会だ。残念ながら、僕のようなフリーランスはいつも蚊帳の外だ。
 
会見のスタートは、だいたい12時半から13時。午前の練習を終えて昼食を済ませてからという運びだ。時間は30分ほどで、長くても1時間は超えないくらい。翌日の試合がアウェーの場合は、この会見後に出発することになる。
 
 基本的にプレミアリーグの取材証を持っていれば、どのチームの金曜会見にも入ることができる。煩雑な事前申請は不要だ。ただ、ほぼ同時刻に開かれるから掛け持ちは不可能で、番記者ではなくても同じチームに通うことになる。僕の場合はチェルシーだ。会見の場所はコブハムのトレーニングセンター。金曜の朝、電車に乗って、時々車で、ロンドン郊外のコブハムに足を運ぶのが習慣になってどれくらい経つだろうか。
 
 チェルシーの金曜会見に行くようになったのは、ジョゼ・モウリーニョがきっかけだった。就任会見でのあの「スペシャル・ワン」発言に、すっかり魅了されてしまった口だ。
 
 モウリーニョはいつも期待を裏切らなかった。対戦相手を語るときは手厳しくて、でもウィットに富んでいるからそこまで刺々しくはなくて。皮肉たっぷりの審判批判も最高だった。メディアに口撃の刃を向けることもよくあったけど、そこは記者たちも心得たもので、激しくも節度を保った言葉の応酬は、質の高いエンターテインメントだった。
 
 戦術オリエンテッドのアプローチが不評で、「サッリ・ボール」などと揶揄されつつ1年でチェルシーを追われることになったマウリツィオ・サッリも、会見で垣間見せる素顔はチャーミングだった。印象に残っているやり取りがある。金曜会見ではなくて就任会見での話だ。モウリーニョの「スペシャル・ワン」発言を引き出した同じ記者が、こんな質問を投げかけた。
 
「モウリーニョは自分自身をスペシャル・ワンだと言いました。あなたはどう呼ばれたいですか?」
 
 サッリは一言。
 
「マウリツィオ」
 
 まさに当意即妙。軽妙洒脱な人柄が滲み出る、最高の返しだった。
 
 今シーズンから指揮を執る現監督のマウリシオ・ポチェティーノは、見た目通り物腰が柔らかで、落ち着いた人だ。当面は結果が出なくても、アメリカのオーナーからはある程度長い目で見られているようで、悠然と穏やかな雰囲気にはそんな安心感があるのかもしれない。
 
 もちろん、このまま中位前後の順位が続けば、さすがに鷹揚に構えてはいられなくなるだろう。そのとき、どんな顔つき、どんな口調で、何をどう語るのか。会見が楽しみだ。
 
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
 
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年11月2日号より転載

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