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イングランド最高のフットボールタウン!「古き良き時代が街ごと保存されている」【英国人記者コラム】

カテゴリ:連載・コラム

スティーブ・マッケンジー

2023年10月29日

試合前日にはもうパブに集まり気焔をあげる

過去のマッチプログラムやグッズを売っているショップが数多く残るニューカッスルは、古き良き時代が街ごと保存されているようなフットボールタウンだ。 (C)WORLD SOCCER DIGEST

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 北に向かう列車の旅が好きだ。目指すは、ニューカッスル・アポン・タイン。ロンドンからイーストコーストを行く『LNER』(ロンドン・ノースイースタン・レイルウェイ)は、景色がたまらない。のどかな田園風景が流れ、やがてヨークを過ぎると右手に美しい海岸線が現われる。座席にゆったりと身体を沈め、車窓に目をやりながら、思索にふける──。およそ3時間の贅沢な鉄道旅だ。
 
 プレミアリーグ3節のニューカッスル対リバプールは、だから絶対に外せないフィクスチャーだった。取材申請をして、許可が下り、8月26日、僕はキングスクロス駅から待ちに待った旅に出た。前乗りで一泊して、試合は翌日の16時30分キックオフだ。
 
 サウジアラビア資本になって、ニューカッスルは競争力と魅力を取り戻した。昨シーズンは4位と躍進し、チャンピオンズリーグを戦う今シーズンは、イタリアの逸材サンドロ・トナーリを獲得するなど、さらなるパワーアップを遂げている。地元のサポーター以外、ほとんど誰も見向きもしなかった数年前までがまるで嘘のような変貌ぶりだ。
 
 サウジに後ろ暗いところがあろうと、ファンにとっては結果がすべて。ニューカッスルのサポーターはサウジのオーナーシップを一様に支持している。
 
 ニューカッスルの駅に降り立つ。出迎えてくれるのが、目の前の小高い丘の上に建つセント・ジェームズ・パークだ。街の中心部に聳え立ち、人々が仰ぎ見るこのスタジアムは、まさに殿堂の趣。実際、ニューカッスルの精神的、文化的な象徴と言っていいのがセント・ジェームズ・パークだ。
 
 ニューカッスルのサポーター、通称ジョーディーは、クラブ愛が強く、情熱的なことで知られている。愛はどれくらい強いのか。試合前日にもうパブに集まって気焔をあげるくらいだ。ロンドンや他の街では考えられない。他のどのチームのサポーターも、行きつけのパブに集合するのはもちろん当日の、せいぜいキックオフの数時間前だ。ジョーディーは違う。ゲームデーが待ちきれないのだ。

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 僕もパブに向かった。その店は郊外にあった。市街地から20分ほどのドライブだった。同乗したのは友人の車だ。駅で落ち合ったその友人は、僕が出版社に勤めていたときの同僚で、郊外のそのパブ、『スリー・タンズ(Three Tuns)』は彼の友人が経営する居心地のいい店だった。
 
 テーブルを囲んだのは、元同僚と店のオーナーと、彼らの知人や顔馴染みだという3人。そのうちのひとりは常連のジョーディーで、あとの2人はリバプールのファンだった。
 
 興味深かったのは、リバプール・ファンのひとり、名前を仮にジョンとしよう、そのジョンの話だ。ジョンはなかなかのレッズ信者で、仕事の関係でいま住んでいるドバイで同好の士を集めて私設のファンクラブを作り、時間が許すかぎりこうして観戦に戻ってくるそうだ。今日もドバイから飛んできたばかりで、明日は試合が終わったらとんぼ返りだと笑った。決勝でもなんでもない単なるリーグ戦の1試合のために一泊二日の強行軍とは見上げたものだ。
 
 夜も更け、「またどこかで」と言って別れたジョンとは、本当にまたどこかの街のどこかのパブで会えるような気がしてならなかった。
 
 ニューカッスルが最高のフットボールタウンと言えるのは、グッズやメモラビリアを売っているショップが実店舗でまだ残っているからでもある。古いマッチプログラムや往年のスターのサイン、フィギュアにフォトグラフ、書籍や雑誌を扱うショップは、いまはほとんどがオンラインになって、ロンドンの街角からもすっかり姿を消してしまった。それがニューカッスルには残っていて、まるで古き良き時代が街ごと保存されているようで、だから北への旅が好きなんだろう。
 
 さて、試合までまだたっぷり時間があるな。腹ごしらえをしたら、ゆっくりとショップを巡ってみようか──。
 
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
 
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年10月5日号より転載

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