青と白のペンギンのユニホーム。選手権出場29回で準優勝１回、ベスト４が２回。インターハイ出場21回でベスト４が１回の実績を誇る岩手県立遠野高校サッカー部の選手たちが身に纏う、伝統のユニホームだ。

　日本代表選手も輩出してきた遠野高がある遠野市は、昔からサッカーが非常に盛んな地域で、同校を中心に街全体を挙げてサッカーの育成・強化に努めている。

　今年、遠野は新人戦で準優勝、インターハイ予選で優勝を飾った。迎えた選手権予選、準決勝の盛岡中央戦で、スタメン８人が遠野中学出身の選手で固められたチームは、攻守の切り替えの速さとテンポの良い攻撃を見せ、３－０の完勝。県内３大会すべてのファイナリストとなった。

　この試合で非常に効果的なプレーを見せていたのが、10番を背負うボランチ・昆野翔太だ。キープ力に長け、突破するドリブル、いなすドリブル、時間を作り出すドリブルとゲーム展開に合わせたボール運びをすることができる彼は、攻撃的なプレーをする一方で、守備のバランサーとして大きな存在感を放った。

　システムは４－１－４－１のチームにおいて、昆野はディフェンスラインがボールに釣られたり、２CBが開いたりする瞬間を見逃さずに、ポジションを落として対応。時にはスイーパーの位置に立って裏のスペースのカバーとラインアップを司るなど、相手にとって常に嫌なポジションを取り、奪ったボールを正確なパスやドリブルを駆使して攻撃につなげた。

　攻守におけるリズムメイクがチームに安定感をもたらし、勝利に導いた昆野。攻撃的な選手でありながら、なぜそこまで守備意識が高いのか。それを問うと、笑顔でこう返した。
 

「佐藤邦祥監督たちからは、『もっと前のほうでプレーしてほしい』と言われているのですが、守備のリスクマネジメントを僕は大事にしているので、そこは臨機応変にやろうと思っています。

　今日の相手は、ワントップのポストプレーからトップ下の選手がドリブルで狙ってくるので、そのラインを分断して中央を突破させないことを考えたので、よりそういうプレーになったと思います」

　インテリジェンスと献身性を兼ね揃える昆野は、陸前高田市出身。東日本大震災の影響で、幼稚園の頃に遠野市にやってきた。小学生の時は、遠野市で屈指の強豪であるマリオ・ヴィトーリアFCでプレー。

　その時に週１回開かれる遠野中と遠野高の合同練習会に参加して、年上の選手たちと試合をしたり、高校生に教えてもらったりと、サッカーの盛んなこの地域で着実に力をつけていった。

　遠野中から遠野高に進むと、１年から出番を掴み、昨年から10番を託された。合同練習会は今も継続して開かれており、今では自身が遠野市の少年たちの憧れの存在となっている。

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