これまで幾度となく日本の前に立ちはだかって来たイラクを破り、６大会連続の五輪出場権獲得に導いた手倉森誠監督。試合後の指揮官のコメントをお届けする。

【リオ五輪予選PHOTOダイジェスト】ロスタイムの劇的弾でリオ行き決定！日本 ２-１ イラク

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手倉森誠（U-23日本代表監督）
 
　今日のビッグゲーム、リオ五輪の出場と決勝進出を懸けた試合に勝てたこと、まずはホッとしています。今日は延長には行きたくないと思って戦っていました（笑）。幸先良く１点取った後、CKから失点したのですが、風が災いした失点だったと話をして、後半は落ち着いてプレーするように指示しました。
 
　ただ、イラクが攻勢を強めてきた時に、『これは我慢比べだな』と。終盤、おそらくイラクは延長のことを考えていたんじゃないかなという雰囲気があった。一回、相手陣内へ押し込んでいけば、なにか起こるだろうという予感がしていました。
 
　最後の15分に投入した浅野で、なんとか突破口を切り開きたかった。そこでCKを得てからの劇的な２点目――。誰も書けないようなシナリオでの幕切れでしたけど、これまで苦しめられてきたイラクに３度目の正直で勝って、決勝とリオ行きを決めらました。なにより、選手たちにとって自信となる結果だったと思います。
 
――『勝てない世代』と言われたチームを率いて、苦労もあったと思います。勝った瞬間、頭になにがよぎったでしょうか。
 
　（試合が）終わった瞬間、『明日休めるな』と、まず思いました（笑）（※編集部・注／決勝だと中３日空くが、３位決定戦だと中２日での試合となる）。次に、これで本大会まで仕事ができる、と。そして、スポンサー、サポーター、メディアの皆さんに本当にご心配をお掛けしたけれど、『やりました』というような気持ちになりました。皆さんの支援に報いることができてホッとしていますし、お互いに『おめでとう』と言いたいです。
 
――イラク戦は前半から飛ばしていたように見えました。延長戦前に、エネルギー切れするという怖さはなかったのでしょうか。
 
　これが我々のパフォーマンスなんだと思いながら見守っていました。こちらのコンディションを考えて、これくらいやって普通だなと。後半、ガス欠というか、イラクに主導権を奪われた時間帯があった時に、前半のパフォーマンスから来たんだろうなと思ってはいました。
 
　その時に、選手たちの“コントロール力”が出た。これまでの戦いの中で耐え抜く覚悟を、あの時間帯から持てたことが良かったと思います。失点してギリギリの勝負になりましたし、前半に２点目が取れていればという想いもありますが、決勝のためにこういった接戦をやらせてもらったのだと感じています。
 
――イラク戦の先発起用の意図を教えてください。
 
　大会を通じてスタメンを変えてきましたけど、流れを作っていきたい、自分が選んだ武器はすべて使いたいな、と。それは選手たちの成長のためにです。１、２戦目で使った先に疲れ具合、回復具合、そして対戦相手になにが効くのかを見極めてオーダーを組み続けてきました。それは今日も変わりません。
 
――掛かっていた重圧ものすごく大きかったと思います。
 
　『リオに行きたい』、『五輪に行きたい』、『日本サッカーの連続出場を途切れさせたくない』と常に思ってきました。みんなの前では常にポジティブで、自分が（監督を）やっているんだから行けるんだと。
 
　ただ、一人になった時には、負けた時の怖さであったり、オリンピックに出られなかったことの考えも、じっくり考えたりもしました。それは『嫌だ、嫌だ、嫌だ』（笑）、とまた切り替えて、いつものポジティブに戻る。自分で念じればその言葉は叶うと、自分の言葉は「まこと」だなっと言っているくらいでして（笑）。もう自分を信じるしかなかったです。
 
　あとは、みんながいる、仲間がいる、常にそう思える雰囲気を作って、大きな仕事だからこそみんなで乗り越えなければいけないと考えていました。それで重圧は分散できたなと思います。僕だけじゃなく、いろいろな人が重圧を感じているなかで、少しでもそれが開放できていれば、みんなが幸せになって良かったなという安堵感があります。
 
――決勝に向けて、意気込みをお願いします。
 
　決勝戦に向けては、スタッフが（韓国とカタールの準決勝が行なわれている）スタジアムへ向かいました。それをしっかり分析して、良いオーダーを組めるように、回復もさせて、トレーニングもして、次に挑めればと思います。