「PKはあまり外したことがないです」

　堂々たるシュートは、裏打ちされた技術力があるからこそだ。

　湘南ベルマーレは８月２日、天皇杯４回戦でセレッソ大阪と対戦。開始12分に大橋祐紀が自ら獲得したPKを決めて先制する。しかし、その後は攻めあぐねて試合終盤まで１－０のまま進むと、90＋４分にPKを献上。これを決められて同点とされ、延長戦に突入した。120分を戦った末に、勝負はPK戦に委ねられた。

　両GKの好セーブが続き、決着がついたのは７人目のキッカー。最後は守護神のソン・ボムグンが足でストップし、湘南が７年ぶりのベスト８進出を果たした。

　白熱したPK戦で驚きだったのは、湘南のキッカー選考だ。ひとり目が20歳の田中聡で、ふたり目も同じく20歳の鈴木章斗。３人目は18歳の２種登録FW、石井久継。４人目が23歳の奥野耕平で、５人目の山田直輝と６人目の杉岡大暉を挟み、７人目は19歳の松村晟怜だった。重要な場面で、７人中５人が若手。山口智監督が日頃から口にする「年齢は関係ない」を表す人選で掴み取った勝利は、１勝以上の価値を生んだと言えそうだ。

　特にサプライズだったのは、２種登録の石井の選出だろう。自らキッカーに名乗りを上げたというPK戦について、若きテクニシャンはこう振り返った。

「外す気はしなかったです。大橋（祐紀）君が前半に蹴った時に、ブーイングが凄かったんですよ。それをベンチで見ていて『楽しそう』と思いましたし、こんな経験もなかなかないので、蹴っておいた方がいいなと」

　延長前半から投入された石井は、30分間のプレーも回想した。

「みんなが90分を戦い終えて、延長になってベンチに帰ってきた時に絶望感のある顔をしていて（笑）。自分がゴールに向かわないといけないと思いましたし、阿部（浩之）君やヨシ君（中野嘉大）にもそういった声をいただいたので、いつも以上に活躍したい気持ちが強かったです。

　前回セレッソとのリーグ戦に出場した時は10分程度のプレーでしたが、その時は納得のいくプレーが出来なかった。その時に比べれば、相手が疲れていたこともありますが、成長しているなと思えました。間でターンしたり、自分の良さも出せた。ただ、もう少しゴール前に入っていくプレーを増やさなければいけないとも感じました」

　ピッチに立つ時、またPKを蹴る時にも「緊張はなかった」という石井。高校３年生にしてこの強心臓ぶりは、頼もしいばかりだ。

取材・文●岩澤凪冴（サッカーダイジェスト編集部）

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