本田圭佑が発起人となり創設された「４対４U10」は10歳以下の子どもを対象にした、４対４、10分１本勝負、交代は自由など新しいルールのサッカーだ。ベンチには監督やコーチが存在せず、戦術や交代などを自ら考えながらプレーする点が大きな特徴となっている。

　子どもたちが自ら考え行動する力を育み、未来のサッカースター候補を育成することで、日本サッカー界の成長に繋げる狙いもある。全国大会（予選リーグと決勝トーナメントの準決勝までは2023年12月24日、25日、決勝は12月26日）も開催されるこの競技を立ち上げた理由を、本田は次のように語った。

「小学校４年の世代を自分のサッカースクールで見ていた経験から、彼らの全国大会がないことを知りました。U12の大会でみんな確かに全員プレーできちゃうんですけど、小学生の世代は１学年違うだけで体格の差がだいぶある。事実上、U12は５、６年生の大会。小学校３、４年の子が活躍できるような大会ではないと思って、じゃあ、彼らのために全国大会を作ろう、と。そういうところに至りました」

　いざ立ち上げに向けて動いてみると、こんな思いを抱いた。

「今まで抱えていたサッカー界や日本社会への疑問や不満を子どものサッカーの大会を通じて少しでも良い方向に変えられる大会にしたいなと」
 

　本田が抱えている「疑問や不満」とは具体的に何か。そうした質問が飛ぶと、本田は「それを答えるには時間がかかりますけど（笑）」と言ったうえで、こう答えた。

「一生懸命頑張っているチャレンジャーに冷たい社会だなと、正直思います。常にリスクから入り、失敗を許さない。失敗した人に対しても新しいチャンスを与えない。なんでこうなってしまったかを話すと時間がかかるのであれですが、そういうものを変えたいと思っている人たちが何かしらこういった形でスポーツの現場、教育の現場から行動に移していくのがすごく大事です。だから、失敗しても何度もチャレンジできるルールが必要だと思って、この大会にはそれを盛り込みました」

　究極の負けず嫌いを育てる。本田のコメントからは、そういう意図も読み取れた。事実、記者会見の最後に彼は「今日伝えたいことをまとめると」と話したあとに強烈なメッセージを残している。

「一生懸命頑張っているチャレンジャーを後押しするようなルールができればという想いが強くあります。日本の社会、サッカー界にある問題点を感じながらずっとここまでやってきて、たかがサッカー、たかが子どもの大会と思うかもしれないですが、たかがサッカー界から僕みたいな変な人間が生まれたのも事実なわけで、この大会を通じてサッカー選手の育成はもちろん、ひとりでも多くのユニークな、日本を背負っていくような人材を輩出できれば発起人としてこれほど嬉しいことはありません」

取材・文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）

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