【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る vol.5~1993-94シーズン ~

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2015年11月24日

奇跡のリーガ4連覇から4日後、アテネの夜に味わった悪夢。

奇跡のリーガ4連覇を果たしてから4日後、アテネで悪夢を見たバルサ。長く続いた黄金時代の終わりを告げた瞬間でもあった。 (C) Getty Images

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チーム内の確執など不安を抱えながらもリーガでは三たび奇跡を起こした。ちなみに前シーズン、サプライヤーの変更に伴い、ユニホームに白く太いラインが入ったことがバルセロニスタやクライフ監督の不興を買い、1年でこのデザインは改められた。 (C) Getty Images

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 栄光に満ちた91-92シーズン、リーガでは奇跡の逆転優勝を果たしたバルサ。こんなドラマは二度と見られないだろうといわれていたが、実はその翌シーズンも最終節で逆転優勝を果たしていた。
 
 チャンピオンズ・リーグは2回戦でCSKAモスクワに敗れて早期敗退、冬のトヨタカップもサンパウロに敗北、さらに報酬をめぐるフロントと現場の確執が表面化するなど、ネガティブな事象が立て続けに起こった92-93シーズンだったが、再び奇跡は起きた。
 
 最終節、首位のマドリーがまたしてもテネリフェに敗れ、レアル・ソシエダを破ったバルサが、勝点1差で逆転してリーガ3連覇を飾ったのである。
 
 こうなると、興味の焦点は連覇がどこまで伸びるかである。そしてバルサは、切り札として強力なストライカーを呼び寄せた。ブラジル人のロマーリオである。彼は入団時、「30ゴールを決める」と豪語していた。
 
 このシーズン、バルサのライバルは宿敵マドリーではなく、近年めきめきと力をつけてきたデポルティボだった。前シーズンを3位の好成績で終えたこのガリシアのクラブは、13節にバルサを首位から引きずり下ろすと、そのまま順位を維持し続けた。
 
 そして迎えた最終節。両チームの勝点差はわずか1である。デポルティボはバレンシア、バルサはセビージャをホームに迎えて、最後の戦いは同時刻に始まった。
 
 バルサは、ディエゴ・シメオネのゴールでセビージャに先制を許す。フリスト・ストイチコフが同点とするも、今度はダボル・シュケルに決められた。嫌なムードで前半を終えたが、後半になるとストイチコフの同点弾、そしてロマーリオの公約通りのシーズン30点目などゴールラッシュを見せ、終わってみれば5-2の大勝を飾った。
 
 人事を尽くして天命を待つバルサ。そんな彼らの元に、デポルティボがPKを得たとの報が入る。スコアレスで進んでいたバレンシア戦、このPKが決まればデポルティボは勝利、そしてリーガ初優勝が決まる。
 
 敗北を覚悟したバルサの選手、スタッフ、ファンたち。しかし次の瞬間、カンプノウは大歓声に包まれた。デポルティボのミロスラフ・ジュキッチがPKを外したのだ。間もなく試合は終わり、バルサの4連覇、そして3シーズン連続の最終節逆転優勝が決まった。
 
 三たび奇跡を起こしたバルサだが、これで戦いは終わりではなかった。4日後には、ミランとのチャンピオンズ・リーグ決勝が控えていたからだ。
 
 この欧州の戦いにおいては、バルサは優勢と見られていた。ミランは守備の要であるフランコ・バレージ、アレッサンドロ・コスタクルタを出場停止で欠いており、勢いという点でもバルサに分があると見られていたからだ。
 
 意気揚々と、決勝戦が行なわれるアテネに乗り込んだバルサ。異様な緊張感に包まれていた2年前とは異なり、選手やスタッフには余裕すら漂っていた。
 
 しかし、試合が始まるとすぐに、バルサは厳しい現実を突きつけられる。不利とされていたミランの激しいプレッシャーに手も足も出ず、前半のうちにダニエレ・マッサ―ロの2ゴールでリードを奪われたのだ。選手もスタッフも、顔色を失っていた。
 
 後半開始から間もなく、デヤン・サビチェビッチに鮮やかなループシュートを決められると、バルサは「早くこの試合が終わってほしいと願った」と選手が口々に語ったほどの苦しみに満ちた時間を過ごし、0-4の惨敗で3度目の決勝戦敗退を喫した。
 
 4日前の歓喜から一転、バルサは地獄へと突き落とされた。
 
 ヨハン・クライフ監督とストイチコフ、ミカエル・ラウドルップなど多くの主力選手との長年にわたる確執が頂点に達していたこのシーズン。アテネの夜を境に、スペイン、欧州を席巻した「ドリームチーム」は崩壊への道を歩み出した。

監督:ヨハン・クライフ(オランダ)
その他の主なプレーヤー:GKブスケッツ、DF J・カルロス、MF ゴイコエチェア、エウセビオ、I・イグレシアス、FW ベギリスタイン、サリーナス、エステバランス、オスカール、エーケルンド

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加入1年目でリーガ得点王に輝いたロマーリオ。しかし終盤戦に入ると、シーズン後のアメリカ・ワールドカップ(優勝&大会MVP)を見越して体力を温存するようなプレーを見せたことで、クライフ監督との関係が悪化、結局、在籍期間は2年にも満たなかった。写真は94-95シーズン。 (C) Getty Images

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◎1993-94シーズン成績
リーガ:優勝(25勝6分け7敗・91得点42失点)
国王杯:準々決勝敗退(対ベティス)
チャンピオンズ・リーグ:決勝戦敗退(対ミラン)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):ロマーリオ(30点)、ストイチコフ(16点)、クーマン(11点)、アモール(8点)、ベギリスタイン(7点)、ラウドルップ(5点)、バケーロ(5点)、I・イグレシアス(4点)、エステバランス(3点)、サリーナス(2点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

DF セルジ(←ユースから昇格)
MF I・イグレシアス(←ヒホン)
FW ロマーリオ(←PSV)
FW エステバランス(←テネリフェ)
FW エーケルンド(←ユースから昇格)
◇OUT

DF アレサンコ(→引退)
DF ソレール(→セビージャ)
DF P・アルファロ(→ラシン・サンタンデール)
MF ヴィチュヘ(→ボルドー)
FW マケーダ(→オビエド)
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