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コレクティブなチームが苦戦したカタールW杯。最たる例が場当たり的なアルゼンチンに“墓穴を掘って”屈したオランダだ

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2023年01月16日

チームとしての練度ではアルゼンチンを上回っていた

組織力では上回っていたオランダはメッシに翻弄された。(C)Getty Images

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 カタール・ワールドカップでは、プレーデザインを組織として感じさせるチームがいくつかあった。どのような意図でそこにいて、ボールをつないでいるのか。プレー構造や仕組みというのか。欧州勢のドイツ、ベルギー、スイス、ポーランド、オランダは最たるチームだろう。戦術的に整備され、組織として動く美しさがあり、再現性も高かった。
 
 しかしながら、今回はどこも勝ち上がりには苦労している。
 
 周知の通り、ドイツは日本に金星を献上し、グループリーグで敗退した。ベルギーもモロッコに敗れ、クロアチアに勝ち切れず、決勝トーナメントに進めなかった。スイス、ポーランドはどちらもベスト16まで勝ち上がったが、その先を進めていない。オランダも攻守のバランスの良さで準々決勝まで勝ち抜いたが、そこで姿を消した。
 
 コレクティブな動きを見せたチームが、必ずしも勝ち上がっていない。
 
 その事実は特筆に値する。
 
 オランダがアルゼンチンに敗れた試合は象徴的だった。本能や感情に突き動かされ、それがチームの力に変換されていたアルゼンチンに振り回されていた。リオネル・メッシという理屈を超えた選手に率いられたチームに対し、完全に後手に回った。システムが不具合を起こしたというのか。終了直前に一度は同点に追いついたものの、延長を戦った後のPK戦で敗れた。

 オランダはロジカルに守り、攻めたと言える。アヤックスで世界一になったルイス・ファン・ハールという稀代の戦術家が率いたチームらしかった。チームとしての練度ではアルゼンチンを上回っていた。
 
 しかし、メッシ一人に苦しんでいる。先制点は典型的だった。メッシがゴール正面でボールを持った時、しっかりと前に立ちはだかっているし、守備陣形も整っていた。だが矢のように入り込んできた敵に、メッシからほとんどあり得ないような軌道でスルーパスが打ち込まれ(股を抜いていた)、そこから一瞬でゴールを叩き込まれた。

【動画】オランダ戦でメッシの絶品スルーパスから奪ったアルゼンチンの先制点

 どれだけ戦術を的確に運用し、それなりに優れた選手がいても、必ずしも勝利を手にできない。

 それがサッカーの真理であることが、改めて証明される形になった。

「オランダはメッシを、アルゼンチン人を怒らせたのが運の尽きだった」
 
 そんな意見もある。

 オランダのファン・ハールはメッシやアルゼンチンの問題点を指摘し、挑発する発言をしていた。論理的に言えば、勝つ算段がついていたのだろう。たしかにメッシは他の選手の半分しか走らないし、チーム全体にデザイン性はなく、悪く言えば場当たり的だった。しかし、チームが感情任せで一つに束ねられることがあることを、指揮官は知るべきだったのだ。
 
 オランダは自ら墓穴を掘ったと言える。道理を極めたプレーデザインに溺れたのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
 
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