10月25日のリーガ・エスパニョーラ９節屈指の好カード、アトレティコ・マドリー対バレンシアは、攻守においてバレンシアを圧倒するなど、スコア以上にアトレティコ・マドリーの圧勝劇に終わった。
 
　ただ逆に言えば、バレンシアがそれだけ不甲斐ない戦いに終始したとも言える。この惨敗を招いた最大の戦犯は、間違いなく監督のヌーノだ。タレントは揃っているにもかかわらず、このビッグマッチで決定的な大失態。即座に何らかの対応策を講じなければ、このままチームはさらなる泥沼にはまりかねないだろう（バレンシアは９節終了時点で勝点12の９位）。
 
　両監督による戦術ゲームは、完全にシメオネに軍配が上がった。アトレティコの指揮官はいつもの４-４-２を採用。一方のヌーノは、従来の４-３-３ではなく、相手と同じ４-４-２で対抗してきた。
 
  奇策のつもりだったのかもしれないが、敵地で相手が得意とするシステムで立ち向かうのは“相手の土俵”で戦うようなもの。あまりにも無謀だった。両者の間に存在する戦術的完成度の違いをわざわざ露呈。完全なる采配ミスと言える。
 
　実際、バレンシアの選手は不慣れなシステムをこなすのが手一杯という印象で、守りはまだしも、90分間を通して攻撃の形を全く作ることができなかった。パレホやA・ゴメスといった攻撃の中心選手がサイドに追いやられ、相手を追いかけ回す姿には悲しささえ覚えた。
 
　対照的にアトレティコの選手は、戦術的にも明確な狙いに沿ってプレーしていた。序盤の30分間は、相手にボールを預けてカウンターを狙う粘り強いスタイルを選択。もっとも、リトリート重視といっても、最終ラインは中盤が数的不利に陥らないよう絶妙な位置取りを常にキープし、激しいプレスで相手の攻撃を抑え込んだ。
 
　そうした効果的なボール奪取からフィリペ、カラスコ、グリーズマンの左サイドで攻撃の起点を作り、中央で待ち構えるジャクソンがフィニッシュを担うというのが、彼らのゲームプランだった。