【アナリスト戦術記】吉田ヴィッセル、好転の兆し。攻守のメカニズム、強みと課題は?

カテゴリ:Jリーグ

杉崎健

2022年08月02日

橋本選手が抜けた穴は、早急に埋めなければならない

守備のメカニズム。1-4-4-2が基本形で、中を締め、外に追い出すような狙いだ。

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 サッカーの奥深き世界を堪能するうえで、「戦術」は重要なカギとなりえる。確かな分析眼を持つプロアナリスト・杉崎健氏の戦術記。第4回目は、J屈指のタレント軍団を取り上げる。

――◆――◆――

 今回のコラムの対象は、ヴィッセル神戸だ。7月2日のサガン鳥栖との試合から吉田孝行監督体制に変わり、7月はリーグ戦の5試合を戦って3勝1分1敗(天皇杯も柏レイソルに勝利)とある程度の結果を残した。まだ降格圏内からの脱出はできていないが、今後の巻き返しが注目されているチームである。

 ロティーナ前監督体制ではリーグ戦が2勝1分6敗だったことから、新体制における7月の結果は成果が出たと言って良いだろう。当コラムは戦術に特化するため、この5試合から見える吉田監督の戦術的側面と課題を、4局面で紐解いていこうと思う。

 まずその前に、前体制と現体制で目に見えて変わった点をデータでご紹介する。試合数が異なり相手も異なるのであくまで参考程度だが、前体制下での9試合において、相手に許したシュート数は1試合平均で13本。これが現体制下での5試合は、8本と減少している。

 また、シュートだけであればどこからでも打たれてしまい計測されてしまうが、決定機をいかに作らせないかは意図的に構築できる。被決定機の数で言えば、前体制下が平均で6回。これが現体制下では2回とこちらも減少しており、目に見えて変わったのは「相手にチャンスを作らせていない」ことである。

 もちろん、この数字は深堀りすれば、7月の対戦相手は下位との対戦もあり、一方で上位陣を相手に勝てていないことも現実としてあるため、8月以降も追っていかないと意味がないことは付け加えておく。

 ではまず、その守備面において、7月の5試合から見える仕組みを見てみよう。

 図のように、自陣での守備時は1-4-4-2を採用していることが多い。状況によってボランチのどちらかが前に出て1-4-3-3のようにもなるが、基本的にはこの形だ。相手のCBに対して武藤嘉紀選手とイニエスタ選手の2トップは無闇には圧力をかけずに、相手のボランチへのパスコースを切りながら構えることが多かった。直近の試合は2人ともに欠場となったためムゴシャ選手と中坂勇哉選手になったが、大きな変化はなかった。

 つまり狙いは、図の円のように相手のボランチ含む中央にパスを通させないこと。当たり前だが中を締め、外に追い出すような狙いだ。敵陣で奪う回数自体は多くないものの、山口蛍選手と橋本拳人選手(現ウエスカ)のダブルボランチが前後左右のスライドを広範囲に行ってくれるため、簡単に打開されることは少ない。ただ、4バックがセンターサークル後方に構えてしまうときは、ボランチとの距離が空いて間を使われることはあった。

 組織として守りながら個人でもカバーできたことで、直近の試合はそれが崩れた典型でもあった。新戦力を起用しながら、かつこれまでの4試合のレギュラーが不在となってしまい、中盤の強度が落ちたと見ている。ここは怪我人や離脱者が戻ってくるのを期待しつつも、移籍してしまった選手もいるため、再考すべき事項かもしれない。特に、攻撃から守備への切り替え時に起こるリスクマネジメントにおいて特別な存在感を示しつつあった橋本選手が抜けた穴は、早急に埋めなければならないだろう。
 
 ただ、柏レイソル戦(0-1)の失点は自らの中盤でのパスミスから招いており、それ以外で決定機を作らせたわけではなかったように、自陣での守備は5試合通して安定感はあった。

 1-4-4-2の陣形を基本としながらも、時にイニエスタ選手が戻って1-4-5-1で守ることもしながら、特に円のようにバイタルエリアは狭く、強固にボランチとCBで挟むシーンが多く見られ、サイドの裏以外でチャンスシーンはあまり作られていない。

 最終ラインと中盤が10メートル間隔で整えていたシーンもあるように、コンパクトにしながらもボールへのアプローチと強度が保たれたからこそとも言える。ただコンパクトにしていても、全体が下がってしまえばボールを放り込まれるが、新体制ではラインの高さ調節や強気なラインアップも見受けられる。

 だからこそ、裏へのボールに反応できるGK飯倉大樹選手を起用し始めたのだろう。ペナルティエリア外であろうと躊躇なくブレイクアウェイで出て行って防げるGKの存在は味方を安心させる。

 当然ながら、彼が飛び出せないボールや、大外へのクロスボールはDFが対応しなければならない。今後の課題は、鹿島アントラーズ戦(1-1)での失点のようなGKが処理できないボールに対するDF陣の予測と対策だ。
 
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