【連載】月刊マスコット批評③「一平くん」――シンプルゆえの強み

カテゴリ:Jリーグ

宇都宮徹壱

2015年09月10日

気になる東京五輪マスコット。一平くんから学ぶ点は少なくない。

愛すべき欠点をさりげなく残している一平くん。サポートクラブの枠を超え、人気を得ている。写真:宇都宮徹壱

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一平くん(愛媛FC 非公式マスコット)
 
■一平くんの評価(5段階)
 
・愛され度:4.5
・ご当地度:2.5
・パーソナリティ:5.0
・オリジナリティ:3.5
・ストーリー性:4.0
・発展性:4.5
 
 新国立競技場建設案に続き、エンブレムまでもが白紙撤回となった2020年東京五輪。この事態に最も当惑し、懸念を深めているのが、大会マスコットを製作している人々ではないだろうか。
 
 現在、どのようなマスコットが準備されているのか、自称「マスコット評論家」の私は知る由もない。が、「日本らしくない」とか「一般国民の理解が得られない」とか、果ては「☓☓☓のパクリじゃないか」などと指弾され、挙句の果てにまたしても白紙撤回となるリスクに、製作サイドは恐れおののいているのではないだろうか。
 
 東京五輪のマスコット発表は、ある意味でスタジアムやエンブレム以上の注目度を集めることだろう。なぜなら日本は、世界に冠たる「マスコット大国」だからである。
 
 海外で一度でもサッカー観戦をしたことのある方であれば、誰もが思ったはずだ。「なんだ、ウチのマスコットのほうが、ぜんぜん上じゃん!」と。日本のマスコットは、それくらいクオリティーが高く、その裾野もまた実に広い。
 
 昨年の『ゆるキャラグランプリ』には、実に1699体ものエントリーがあったという。マスコットとゆるキャラを同列で語るつもりはないが、この数字からも我が国の「大国ぶり」は理解できよう。
 
 そんなわけで、どんなデザイン案が発表されても、国民全員の理解を得られるのは難しい。むしろ力づくで「日本らしさ」や「先端性」をアピールするよりも、最初から「万民に愛されるマスコットなど存在しない」と割り切るべきだと思う。
 
 その上で、私が製作サイドになにかしらアドバイスするならば、(1)デザインがシンプルであること、(2)設定を緩めにしておくこと、(3)あえて欠点を設けておくこと、以上3点を挙げておきたい。これらの条件に見事に合致するのが、(いささか前置きが長くなったが)今回取り上げる愛媛FCの非公式マスコット、一平くんである。
 
 一平くんについては、すでにさまざまな論評がなされているので、基本情報に関する言及はあえて省く。このマスコットの強みは、まず「シンプルにカエルであること」、そして「いくらでも設定を後付けできたこと」、さらに「不遜かつ落ち着きのない行動様式が却って愛されたこと」が挙げられよう。
 
 デザインとキャラクター設定には想像力と遊びの余地を残しつつ、愛すべき欠点をさりげなく残しておくことで、一平くんはJリーグのサポートクラブの枠を超えた人気を得た。逆に言えば、代理店的価値観を強要し、全方位的かつ完全無欠な「嫌われない」デザインにするのは、今回の場合は極めて筋が悪い。シンプルゆえの強み。一平くんから学ぶべき点は少なくない。
 
宇都宮徹壱/うつのみや・てついち 1966年、東京都生まれ。97年より国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。近著に『フットボール百景』(東邦出版)。自称、マスコット評論家。公式メールマガジン『徹マガ』。http://tetsumaga.com/

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