必要な時間をマインツは与えるつもりだ。
新天地マインツでの1年目、はたして武藤嘉紀はどんなパフォーマンスを見せるのか。地元紙でコラムニストを務めるラインハルト・レーベルク記者の筆で、武藤の「挑戦記」をお届けする。
――◆――◆――
イングランド王者チェルシーからオファーを受けた選手にとって、スポーツ的にも財政的にもブンデスリーガで中位のクラブで主役級の活躍を演じるのは、それほど難しいことではないだろう――。日本ではそういう見方があるかもしれない。
しかし、マインツでは誰もそうは思っていない。監督もマネジャーも、武藤嘉紀にはそこまで期待していないのだ。もちろん、いい意味で、だ。余計なプレッシャーをかけないための心配りである。
指揮官のマルティン・シュミットとマネジャーのクリスティアン・ハイデルは、武藤を「これから発展する選手」と位置付けている。国外初挑戦という第一歩をいままさに踏み出したばかりで、これから新しい環境に適応し、ドイツ語を習得し、フィジカルなサッカーに慣れ、戦術の基本を学ばなければならない選手である、と。
そのために必要な時間を、マインツは武藤に与えるつもりだ。
シーズン初公式戦となった8月9日のDFBカップ1回戦・コットブス戦(3-0)で、武藤はベンチスタートだった。がっかりしたのは、本人よりも現地まで駆けつけた日本人記者たちだったかもしれない。
武藤は70分、同じく新加入のCFフロリアン・ニーダーレヒナーと代わってピッチに入った。シュミット監督が武藤ではなくこのニーダーレヒナーを先発で起用したのは、3部の格下が相手だったからだ。
当然、マインツがボールを支配してゲームの主導権を握る展開となる。その場合に必要なのは、武藤のように敏捷で、ダッシュ力に優れた、つまりカウンターに適したタイプのフォワード(そのことを武藤は、欧州のトップクラブであるモナコ、ラツィオとのテストマッチで証明してきた)ではなく、フィジカルが強靭で、DFを背負ってボールを収められる基準点型のフォワードだ。
だからシュミット監督は、186センチ・86キロと屈強な体躯を持つ基準点型のニーダーレヒナーを選んだのである。
武藤がピッチに入った時、試合の行方はとっくに決まっていた。チームはすでにギアを落としていたため、武藤が攻撃面でアクセントをつけることは難しかった。試合終了間際、これも新加入の右SBレオン・バログンのセンタリングに合わせ、ゴール正面から右足でシュートを放ったが、クロスバーの上に大きく外した。力が入りすぎたのだ。
マインツはかなり高い確率で、近日中に、頑強で経験豊富なセンターフォワードを獲得するだろう。そうなると武藤の主戦場はウイングとなり、クリスティアン・クレメンス、ハイロ・サンペリオ、マキシミリアン・バイスター、パブロ・デ・ブラシスがポジション争いのライバルとなる。
ホームに昇格組のインゴルシュタットを迎えるブンデス開幕戦(8月15日)では、シャルケからレンタル継続中のクレメンスとハイロの先発が濃厚だ。ともにシュミットのサッカーを理解しているうえに、仕上がりも順調でコンディションが整っているからだ。
キャンプとプレシーズンマッチを通じ、武藤はポテンシャルを示した。レギュラーは十分に務まるだろう。とはいえ、いまはまだスタートラインに立ったばかり。フィジカル的にも戦術的にもだ。
プレッシングとトランジション(攻守の切り替え)を重要視するマインツでは、アタッカーは効果的なファーストディフェンダーでなければならない。そのためには最高のフィットネスを保ち、周囲と連動して行なうプレッシングをマスターしなければならない。
武藤の学習意欲は非常に高く、吸収能力も高い。ただ、時間が必要だ。首脳陣も、ファンも、そしてメディアも辛抱強いマインツでは、新加入選手にはその時間が与えられる。その選手の移籍金がどんなに高額だったとしてもだ。武藤も長い目で見てもらえる。
――◆――◆――
イングランド王者チェルシーからオファーを受けた選手にとって、スポーツ的にも財政的にもブンデスリーガで中位のクラブで主役級の活躍を演じるのは、それほど難しいことではないだろう――。日本ではそういう見方があるかもしれない。
しかし、マインツでは誰もそうは思っていない。監督もマネジャーも、武藤嘉紀にはそこまで期待していないのだ。もちろん、いい意味で、だ。余計なプレッシャーをかけないための心配りである。
指揮官のマルティン・シュミットとマネジャーのクリスティアン・ハイデルは、武藤を「これから発展する選手」と位置付けている。国外初挑戦という第一歩をいままさに踏み出したばかりで、これから新しい環境に適応し、ドイツ語を習得し、フィジカルなサッカーに慣れ、戦術の基本を学ばなければならない選手である、と。
そのために必要な時間を、マインツは武藤に与えるつもりだ。
シーズン初公式戦となった8月9日のDFBカップ1回戦・コットブス戦(3-0)で、武藤はベンチスタートだった。がっかりしたのは、本人よりも現地まで駆けつけた日本人記者たちだったかもしれない。
武藤は70分、同じく新加入のCFフロリアン・ニーダーレヒナーと代わってピッチに入った。シュミット監督が武藤ではなくこのニーダーレヒナーを先発で起用したのは、3部の格下が相手だったからだ。
当然、マインツがボールを支配してゲームの主導権を握る展開となる。その場合に必要なのは、武藤のように敏捷で、ダッシュ力に優れた、つまりカウンターに適したタイプのフォワード(そのことを武藤は、欧州のトップクラブであるモナコ、ラツィオとのテストマッチで証明してきた)ではなく、フィジカルが強靭で、DFを背負ってボールを収められる基準点型のフォワードだ。
だからシュミット監督は、186センチ・86キロと屈強な体躯を持つ基準点型のニーダーレヒナーを選んだのである。
武藤がピッチに入った時、試合の行方はとっくに決まっていた。チームはすでにギアを落としていたため、武藤が攻撃面でアクセントをつけることは難しかった。試合終了間際、これも新加入の右SBレオン・バログンのセンタリングに合わせ、ゴール正面から右足でシュートを放ったが、クロスバーの上に大きく外した。力が入りすぎたのだ。
マインツはかなり高い確率で、近日中に、頑強で経験豊富なセンターフォワードを獲得するだろう。そうなると武藤の主戦場はウイングとなり、クリスティアン・クレメンス、ハイロ・サンペリオ、マキシミリアン・バイスター、パブロ・デ・ブラシスがポジション争いのライバルとなる。
ホームに昇格組のインゴルシュタットを迎えるブンデス開幕戦(8月15日)では、シャルケからレンタル継続中のクレメンスとハイロの先発が濃厚だ。ともにシュミットのサッカーを理解しているうえに、仕上がりも順調でコンディションが整っているからだ。
キャンプとプレシーズンマッチを通じ、武藤はポテンシャルを示した。レギュラーは十分に務まるだろう。とはいえ、いまはまだスタートラインに立ったばかり。フィジカル的にも戦術的にもだ。
プレッシングとトランジション(攻守の切り替え)を重要視するマインツでは、アタッカーは効果的なファーストディフェンダーでなければならない。そのためには最高のフィットネスを保ち、周囲と連動して行なうプレッシングをマスターしなければならない。
武藤の学習意欲は非常に高く、吸収能力も高い。ただ、時間が必要だ。首脳陣も、ファンも、そしてメディアも辛抱強いマインツでは、新加入選手にはその時間が与えられる。その選手の移籍金がどんなに高額だったとしてもだ。武藤も長い目で見てもらえる。