【喜熨斗勝史の欧州戦記|第8回】日本人が知らなかったこんなに素晴らしい世界があるんだ――セルビアのW杯出場決定、ポルトガル撃破の舞台裏を激白する

カテゴリ:ワールド

連載・コラム

2021年11月21日

異国の地で日本人の名誉を傷付けなくて良かった

ワールドカップ出場を決めたセルビア代表。ポルトガルを下し、歓喜に沸いた。

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 セルビア代表のドラガン・ストイコビッチ監督を右腕として支える日本人コーチがいる。“ピクシー”と名古屋でも共闘し、2010年のリーグ優勝に貢献した喜熨斗勝史だ。

 そんな喜熨斗氏がヨーロッパのトップレベルで感じたすべてを明かす連載「喜熨斗勝史の欧州戦記」。第8回は、ワールドカップ出場を決めたポルトガル戦の舞台裏ついて語ってもらった。
 
――◆――◆――

 言葉が出ないという表現はこのことか、と実感しました。名古屋で指導していた10年にリーグ優勝した時も信じられませんでしたが、不思議な感覚でした。嬉しいのは事実。でも涙が出なかったんです。一夜明けて、自分が撮影した動画を見返した時に初めて涙が出たんです。

 11月14日。我々、セルビア代表は敵地でポルトガル代表に2-1の逆転勝利を収め、2大会連続のワールドカップ出場を決めました。私を招聘してくれたミスター(ドラガン・ストイコビッチ監督)の力になれたこと、欧州選手権出場を逃したセルビアサッカー界の威信を回復できたこと、そして異国の地で日本人の名誉を傷付けなくて良かったこと。世界最高峰の舞台に参加できて“こんなに素晴らしい世界があるんだ”と思えたこと。複雑な感情が交錯する出来事は、もう一生に1度あるかないか、そんな気持ちでいっぱいです。
 

両手を拡げるアレクサンドル・ミトロヴィッチに「まだ終わってないよ!」と伝えにいく喜熨斗コーチ(写真右)。

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 同勝点の状態で迎えたワールドカップ欧州予選最終戦ポルトガル戦。ワールドカップ本大会にストレートインするには、勝利しか道はありませんでした。だから前哨戦としての親善試合カタール戦(11日)から……いや、もっと言えば10月の同予選ルクセンブルク&アゼルバイジャン戦から準備は進めてきました。前回コラムでもお話ししたように、アゼルバイジャン戦ではカードコントロールをしました。警告を1枚持っている選手の出場時間を限定して、できる限りのベストメンバーをポルトガル戦にぶつけようと計算しました。

 アゼルバイジャン戦後は代表選手全員のクラブでの試合出場時間をチェック。確認可能なクラブには日々の練習時間も送ってもらいました。そうしたなか、出場時間が多い選手だと1か月で700分超。ミスターやコーチングスタッフと話してオーバーワーク気味の選手は、カタール戦を休養に充てることにしました。ほぼ万全の状態で大一番へ。でも“ほぼ”というとおり、裏では懸念もあったのです。
 
 実はFWアレクサンドル・ミトロヴィッチは、負傷を抱えたまま代表チームに合流していたのです。カタール戦はベンチにも入れていません。ポルトガル戦の前日練習で動けているのを確認して、やっと起用のメドが立ったくらい。恐らく45分間が限界の“ぶっつけ状態”。その彼が1-1の後半開始から出場して同45分に逆転弾を決めるのだから……あの瞬間、感極まっている選手がいたのも理解できます。でもアディショナルタイムは4分も残っていました。「まだ終わってないよ!」。両手を拡げるアレクサンドル・ミトロヴィッチの写真に映り込んでいますが、まさにその言葉を選手たちに伝えにいく間際です(笑)。
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