１万8000人近くのファン・サポーターが詰めかけたルヴァンカップの決勝戦。やっぱり、これだけお客さんが入ると、スタジアムの雰囲気は良いよね。まだ声は出せないけど、みんなの手拍子で十分に盛り上がっていた。選手たちも気持ちが乗ったと思う。

　ゲームのほうは、最初は堅い入りだった。お互いに様子を見ながら、一度相手にあえてボールを持たせて、ミスがあればそこを狙うとか。これぞ決勝戦という感じだよね。

　徐々にペースを掴んでいったのはセレッソ。ボランチの原川を中心に、ボールを握りながら攻め込んでいく。前半はセレッソが優位性を保つことができていたと思う。

　ただ、スコアは０-０のまま。グランパスとしては、最初の45分前を耐え忍ぶことができたのが大きかったはず。前半はゼロで抑えて、後半に勝負。そういうゲームプランだったんじゃないかな。

　実際、後半が始まってすぐにセットプレーから前田が先制点をゲット。その後はセレッソがさらに攻撃の強度を上げるけど、グランパスはシステムを変えながら守りを固めていく。このあたりのグランパスの試合の進め方はさすがだと思った。

　そして残り10分ぐらいで勝負をほぼ決定づける２点目が決まる。ゴール前のこぼれ球に走り込んだ稲垣が右足を振り抜く。簡単なシュートではなかったと思う。体勢を整えていたGKに触られないように、地面に叩きつけてゴール左上に突き刺す。高度なテクニックが凝縮された一発だった。

　試合はそのままタイムアップ。セレッソの多彩なアタックは見応えがあった一方で、攻めあぐねた感もある。キーマンの乾は今ひとつの出来で、チームとしてボールは握るけど、見方を変えれば“握らされていた”印象だ。ゴール前の高さが足りず、狙いを定めたクロスはことごとくはね返された。
 

　グランパスは守備の時間が長かったとはいえ、選手一人ひとりが守備のタスクをしっかりと遂行しながら、訪れたチャンスを確実にモノにして、クラブ史上初のルヴァンカップ制覇を成し遂げた。

　前への推進力が持ち味のマテウスも、得意の攻撃を自重してチームのためにプレーしていた。守備の局面でとりわけ目を引いたのが、左サイドバックの吉田。これぞ“ファイター”という活躍ぶりで、１対１の強さや寄せの鋭さを存分に発揮して、ピンチの芽を何度も摘んでいた。

　グランパスの選手たちは、全員が与えられた制約を守りながら、惜しみなくハードワークして、勝利のために実直に戦っていた。派手さはなかったかもしれない。手堅いと言えば、手堅い。でも、タイトルをかけた一発勝負では、こういう戦い方がハマるんだと改めて思った。

　まさに試合巧者。フィッカデンティ監督の手腕は素晴らしかったと思う。獲るべくして獲ったタイトル。今のグランパスというチームが備える強さを見せつけた優勝だったね。

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