宇佐美貴史がアウクスブルクでベンチ生活を抜け出す鍵は?

カテゴリ:海外日本人

中野吉之伴

2016年09月24日

ハイインテンシティーの中でも攻守に絡めるようになりたい。

ロングボールを多用する現在のアウクスブルクにあって、カイウビ(手前)のような空中戦に強いアタッカーが2列目では重用されている。(C)Getty Images

画像を見る

 昨シーズンはダルムシュタットという降格筆頭候補を見事残留に導き、『キッカー』誌が選ぶ年間最優秀監督にも選ばれたシュスターは、最小の力でも最大の成果を挙げられる手腕に定評がある。
 
「自分たちの強みに集中して取り組む。ミスを最小限に抑え、攻守の切り替えの早さを高めて成功に持ち込む」
 
 そう語るシュスターが志向するのは、チーム一丸となった守備で相手の攻撃を跳ね返して辛抱強く戦いながら、素早い切り替えで敵陣の手薄なポジションにボールを運んで隙を見逃さずにゴールを陥れる、現実的かつ組織的なサッカーだ。
 
 とはいえ、新しいチームでいきなりすべてが思い通りに運べるほど簡単なものではない。まずは確固たるベースを築き上げるのが必要不可欠。それが出来上がるまでは、大きな博打は打たないつもりなのかもしれない。
 
 とはいえ、ロングボール一辺倒で得点を挙げ、ブンデスリーガで勝点を積み重ねていくことは現実的に難しい。そのことはシュスター自身も分かっているはずだ。宇佐美やシュミッドのように単独で変化をもたらせる選手が必要なのは言うまでもない。
 
 しかし、変化をもたらす選手がメリットとなりうるには、「守備戦術を含めて運動量とボディーコンタクトが強調されるチームの戦い方を壊さない」という条件が満たされるべきなのは、また当然だ。
 
 相手を揺さぶるために起用した選手が、不用意なボールロストで味方を混乱に陥れるよう事態は許されない。韓国代表のク・ジャチョルが2列目の主力を担えているのは、そうしたチーム戦略に合致する存在だからだ。
 
 宇佐美にいま求められるのは、まず腐らずに虎視眈々と自分を磨くこと。そして何より、高頻度でチャンスを作り出せるだけの強力な状況打開力があることを証明していくと同時に、チーム戦術と戦略を把握してハイインテンシティーで攻守に絡めるようになることだ。
 
 その課題を克服できれば、今後は少しずつ出場機会が増えていくことだろう。
 
文:中野吉之伴
 
【著者プロフィール】
ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。

9月21日発売号のサッカーダイジェストの特集は「日本はワールドカップに辿り着けるのか」。ハリルジャパンの危機説を、「本当に日本は弱くなかったのか?」など“10の論点”から検証します。ルーツ探訪では小林祐希選手が登場。

画像を見る

【関連記事】
【ブンデス日本人の現地評】大迫は「ドリームゴール」と絶賛され、浅野も初アシストを記録! 一方で香川は2試合連続の出番なし…
地獄から天国へ――。「手のひら返し」でインテルを取り巻く空気が一変する
4年で10人の監督…ビジョンの見えないバレンシアにもはや名門の面影はない
低調なルーニー、自身への批判を「ほとんどがゴミ」と強気に一蹴!
【セルジオ越後】久保建英で“稼ごう”としている日本メディア。4年後を見据え、スターを作ろうとする風潮はどうかと思うよ

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ