『週刊サッカーダイジェスト』の人気コーナー「セルジオ越後の天国と地獄」をサッカーダイジェストWebで公開中！
 
※週刊サッカーダイジェスト９.30号（９月17日発売号）より
 
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　９月５日のウルグアイ戦に続き、９日にベネズエラ戦が行なわれ、２-２のドローに終わった。アギーレ体制での初勝利は、またしてもお預けになってしまったね。
　ただ、これをもってしてアギーレ監督の是非について論じるのは時期尚早だろう。この２試合では監督の戦術、采配以前の問題として、目を覆いたくなるミスがあまりに多かったからだ。
 
　アギーレ監督はザッケローニ前監督とは違って、この２試合で多くの選手を起用した。ところが、誰が出ても同じようなミスを犯してしまった。とにかくミスパスが目立ったし、考えられないトラップミスもあった。クリアにも失敗するし、GKと１対１も決められず、FKも枠に飛ばない。おまけに、焦る必要がないところで無謀なタックルに行ってPKを与え、GKがファンブルしてゴールをプレゼントしてしまう……。
 
　ベネズエラ戦が引き分けに終わったのは、相手のミスに救われただけ。彼らがウルグアイほどのクオリティーを持っていたら、２-５で惨敗していたゲームだった。それほど日本は前半から決定的なミスを犯していた。つまり、日本のレベルはその程度ということ。先のワールドカップでも明らかになったように、アジアではある程度通用しても、世界との差はまったく縮まっていない。その事実を真摯に受け止めなければならないよ。
 
　この２試合での数少ない収穫が、柴崎、武藤といった新戦力がゴールを奪い、代表に新たな風を吹かせたことだろう。
　ただし、ふたりを「若手」と表現するのは間違っている。92年生まれの彼らは今年22歳。92年生まれと言ったら、ブラジル代表のネイマールやドイツ代表のゲッツェと同じ年なんだ。特にプロ４年目となる柴崎は、ベネズエラ戦で代表初キャップを刻んだこと自体が遅いくらいだ。
 
　柴崎が確かなテクニックとしっかりとしたビジョンの持ち主なのは間違いない。今後の日本代表の中盤を担っていく可能性は大いにあるだろう。でも、森重や細貝とは合っていない気が僕にはした。彼を継続して起用し、活かしていくためにはどうしたらいいか、アギーレ監督は考えるべきだろう。
 
　もっとも、その柴崎にしても、前半にとんでもないパスミスを犯している。あれが失点に繋がっていたら、ハーフタイムに代えられて、後半のゴールは生まれていなかったかもしれない。もっとシビアな目で評価しなければならないだろうね。
 
　一方、武藤に関しては、ちょっと騒ぎすぎじゃないかな。彼は今季のルーキーで、確かにここまでJリーグで８ゴールを奪い、代表デビュー２試合目にしてゴールを決めた。ただし、活躍しているのはわずか半年のことで、継続して結果を残せる保証はどこにもないんだ。
 
　柿谷だって代表デビューした当時は結果を残し、フィーバーに沸いたけど、その後はさっぱり。今では代表での存在感はまるでない。だから、武藤も継続して結果を残すようになるまで見守るべきだ。
 
　はっきり言って、慶応大に在学中なんてことはどうでもいい話。彼はれっきとしたFC東京のプロ選手なんだから、必要以上にその点を取り上げるのは、彼に対しても、FC東京に対しても失礼だ。
　本人はなにひとつ変わっていないのに、周りの環境が勝手に変わっていく――。武藤は今まさに、プロの洗礼を浴びているところじゃないかな。自分を見失わず、謙虚な姿勢を保ってほしい。