[高校サッカー選手権準々決勝】前橋育英 ３-０ 米子北／１月５日／駒沢

　雪辱を期するためのステージへ――。前橋育英は２年連続で選手権ベスト４入りを成し遂げた。
 
　試合はまさに盤石の内容だった。長短のパスを自在に操って米子北を翻弄すると、前半21分にCKから３年生CBの角田涼太朗が押し込んで先制に成功すると、その６分後には左サイドを突破した榎本樹（２年）が追加点を挙げて米子北を突き放した。
 
　完全に主導権を握った後半23分には途中出場の宮崎鴻（３年）がダメ押し点をゲット。その後も手堅い守備で米子北の反撃をかわし、４強へと駒を進めた。
 
　試合後、前橋育英の選手が口々にこぼしたのは、「埼スタに戻れた」という言葉だった。彼らがそこまでの執念を燃やしたのは、やはり昨年の苦い思い出があるからだ。
 
　前回大会は、決勝まで勝ち上がりながら青森山田に０-５と大敗を喫し、大舞台で辛酸を嘗めた。１年前の屈辱を知るメンバーが最上級生となり、“忘れ物”を取り戻すべくこのチームは始動。以来、日本一のみを目指してきたのだ。
 
　３回戦の富山一戦で、接触プレーで右ひざに打撲を負ったため、この米子北戦をベンチから見つめていた３年生のキャプテン田部井涼は、「出られなくて少し悔しかった」と前置きしたうえで、これまで一丸となって戦ってきたチームへの信頼を強調した。
 
「準備もしていたので、出れない悔しさはありましたけど、『チームのためにしっかりやる』と自分の中で決めていた。この仲間はやってくれると信じていましたし、悔しいというよりはやって来いという感情の方が大きかった」

　埼玉スタジアムには「行くことを大前提にしていた」（田部井涼）と話す。その舞台でプレーするための切符を掴んだわけだが、前橋育英にとっては、あくまで通過点でしかない。１年前の決勝で後半29分からピッチに立ち、悔恨の念にかられていた田部井涼は、「（埼スタに）行って満足しないというのは当たり前」と表情を硬くする。
 
「埼スタに戻ることで自信も芽生えている。準決勝では、それを個人としても、チームとしても表わしたい。でも、これで終わりじゃないんで、連戦が続くので、苦しいですけど、勝ち切りたい」
 
　準決勝の相手は長野県勢初のベスト４進出と勢いに乗る上田西だ。チームを取りまとめるキャプテンは、「まだまだ球際の強度が足りない。今日に関しては入りもぬるかった」と、３-０の快勝劇にも油断を見せないあたりは、実に頼もしく、逞しい。
 
　準決勝が行なわれるのは明日と厳しい連戦が続くが、日本一を至上命題に掲げ、この１年を過ごしてきた前橋育英。果たして彼らは、その悲願を達成することができるだろうか。
 
取材・文●羽澄凜太郎（サッカーダイジェストWeb編集部）