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【指揮官コラム】鹿児島ユナイテッドFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|プロサッカー文化と「あの騒動」を考える

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2017年05月02日

アマチュアイズムが幅を利かせる日本のスポーツ文化。

選手として、監督として24年に渡りJリーグに身を置く三浦監督にとっても、プロスポーツ文化の浸透は切実な問題だ。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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前節、鹿児島は4試合ぶりの黒星。しかし、首位に勝点1差の3位と好位置につけ、これからの戦いに期待がかかる。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本においてスポーツ文化とはどのようなモノであろうか?
 
 まず、「文化」という言葉がどんな定義なのか分かりづらい部分があるが、僕がここで言うスポーツ文化とは、つまり「プロサッカー文化」であり、例えば今の鹿児島であれば、ユナイテッドFCがなくては生きていけない「サッカー」と「ユナイテッド」を好きな人がどれだけいるのか、「サッカー」と「ユナイテッド」がどれだけ浸透しているのか、ということ。単純にその数が多ければ多いほど、文化として認められているのだと考えている。
 
 一方、日本における「スポーツ」とは、アマチュアイズムなのである。これは長年、プロスポーツの現場に携わってきた僕が抱いている感覚だ。
 
 だからプロスポーツが日本で文化になっていくのは、「スポーツ」という括りで考えるよりも難しく時間が掛かることになるのだ。
 
 日本人の持つスポーツに抱く価値観はアマチュアであり、日本のスポーツ文化はまだアマチュアイズムなのが正直なところであろう。
 
 それは「見る方」も「支える方」も「やる方」も「ファン、サポーターも、経営陣、フロントも選手も」ということだ。
 
「見る方(側)もお金を払って見るということに違和感があって、慣れていないんです」
 僕が指揮を執ったあるクラブでは、地域の人からよくそんな言葉を聞いた。
 
 企業がお金を出して、見せてくれるのがスポーツだと市民は思っている、というのだ……。あるいは「高額なお金をもらってプレーしている選手を不快に思う傾向にもある」とも言われた。
 
 もちろん、そんな人たちばかりでないことは確かだが、野球で言えば高校球児が憧れる甲子園、サッカーではサッカー少年たちが夢見る高校サッカー選手権の舞台と、汗と涙と友情というお金では買えない戦いが、まだまだサッカーではプロチームより根強い人気がある。
 
 まだまだ未熟な人間が必死に努力して目標へ向かう。ここに日本人は感動する。
 
 支える側の経営陣も難しい。プロサッカーをビジネス化していくのは、そう簡単なことではない。アマチュアから脱皮し、いかにエンターテイメントとしてプロ化したスポーツをビジネスにしていくのか。書くのも言うのも簡単だが、プロがなかった時代の人間たちが中心になって大きな企業からクラブの責任者を任される。
 
 ただでさえ、スポーツを見る観点がビジネスと程遠く、お金を払ってスポーツを見るという文化から立ち遅れていた日本なのだから大変なことである。
 
 86年にブラジルから日本へ戻ってからというもの、僕は決まって選手の前で「私は、サッカーは素人ですが……」から始まるクラブ代表(社長)の挨拶を何度も耳にしたことがある。
 
 サッカーは素人でも経営のプロであれば、そこにサッカーへの情熱があれば、挨拶でそんな言い訳から入る必要はない。
 
 やる側は違うように感じるが、Jリーグから少し遅れて開幕戦を迎えたプロ野球のニュースを偶然見た。
 
 ある球団の選手がロッカールームで試合前の円陣で「今シーズンは監督を胴上げしよう!」と言って士気を高めていた。一見、素晴らしく感じるが、甲子園優勝を目指す高校球児がよく言っている言葉。プロ選手が監督を「胴上げしよう」と言うのも、正しいアマチュアイズムのように聞こえた。
 
 93年のJリーグ元年。開幕を迎えたのが24年前の5月15日。僕らはその前日までアマチュアリーグの選手だったのが、その日を以ってプロ選手になった……。
 
 リーグ名が変わり、環境が変わり、ビッグネームの選手が来日。選手が変わり、給与が変わり(上がり)、メディアでの扱いが変わり、世間の目が変わり、集客も変わった。
 
 それだけでプロとして認められているようになった。
 
 しかし、サッカーは文化として根付いているのだろうか?
 
 もちろんワールドカップ出場、海外で活躍する選手たち、それを支える人たちの数、Jリーグの歩んだ歴史、経験……。少しずつでも進歩、発展してきていると思うが、僕はまだまだアマチュアスタンダードが幅を利かせているのが、日本の「スポーツ文化」なのだと思う。
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