インターハイ静岡県予選の準決勝。静岡県のユース年代において唯一プレミアリーグWESTに所属している静岡学園は、浜松開誠館にPK戦の末で敗れて全国への切符を逃した。

「PK戦に持っていってしまった以上は苦しくなる。粘り強く、身体を張って球際を激しく来た開誠館を褒めるべきだし、シンプルに僕らの力不足。だからこそ、泣くというより次に切り替えて、自分はここからさらに成長して、夏に追い込んで、選手権でチャンピオンになれるようにしたいです」

　決意を固めた表情で思いを口にしたのは、３年生のMF神吉俊之介。すでにJ２の２クラブの練習に参加しており、今年の静岡学園において一番プロに近い存在と言える変幻自在のドリブラーだ。

　特長は左右両足で繊細なボールタッチができること。ドリブルする姿勢が良く、常に視野を確保しながら、両足でボールを絡めるようにコントロールして運んでいく。スピードもあり、相手を鮮やかなフェイントでかわしていくというより、技術とキレ、スピードで抜く直進的なドリブラーと言えよう。

　浜松開誠館戦でもそのドリブルは猛威を振るった。右サイドハーフに入った神吉は、開始１分にチームのオープニングシュートを放つと、17分には左サイドハーフの上田悠世のクロスに飛び込んで決定機を迎えるが、これは相手GKのビッグセーブに阻まれた。

「相手が自分にボールが入った時に、サイドハーフとサイドバックでしっかり挟み込んでくるなど、きっちり対策をしてきたのですごくやりづらかったです。でも、そのなかでどう打開するかを考えながらプレーすることができました。

　川口（修）監督からも『もっと内側に取って、サイドバックを上げさせて、スルーパスなど工夫をしろ』とハーフタイムに言われたので、後半は特にポジション取りを意識しながら、１対１になったら迷わず仕掛けることを心がけました」

　こう口にしたように、後半に入るとドリブルのギアがワンランク上がった。後半７分に右から強烈なカットインを仕掛けて左足でシュート。これはわずかに枠の外。同19分にはドリブルでゴール前まで運び、相手が食いついてきたタイミングで右足アウトサイドのスルーパスを通した。
 

　圧巻だったのは32分のプレーだ。浜松開誠館がゴール前まで運ぶと、味方がインターセプトしたこぼれをペナルティエリア内で拾ってドリブルを開始。

　両足でボールタッチしながら、グングン加速していくと３人を振り切って相手のゴール前へ。最後は敵CBの身体を張ったディフェンスに止められたが、右サイドにボールを展開し、攻撃を終わらせなかった。

　自陣エリア内から敵陣エリア付近までドリブルで仕掛けた『１人カウンター』。スタジアムは大きなどよめきに包まれた。

　しかし、１点が遠かった。試合は０－０のまま80分を終了し、そのままPK戦に突入。神吉は２人目で成功したが、後続の２人が外して勝負ありとなった。

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