同じくJ2からJ1切符を狙う松本山雅で、最後尾からチームを統率する橋内優也も重要度が極めて高いベテランだ。広島、徳島ヴォルティス、松本でJ1昇格を3度経験した男の経験値は若返ったチームに不可欠と言っていい。1-8で惨敗した広島との練習試合でも「何でもいいから喋れ」とチームメートを勇気づけ、奮い立たせる姿が目を引いた。
「今季は選手も大きく変わり、監督も去年の途中から柴田さんに代わって、システムやビルドアップも含めていろんなことにチャレンジしている段階。ソリさん(反町康治JFA技術委員長)時代にJ1昇格した2018年の今の時期に比べると完成度は低いですけど、成熟度を高めれば当時のチームを超える可能性は大いにある。その面白さを感じながらやってます」と彼はどこまでも前向きだ。
チーム在籍年数では、村山智彦、田中隼磨に続く3番目。まさに歴史を知る生き証人として山雅魂をピッチ上で示し、若い選手たちに伝えていかなければいけない。彼がケガで離脱した昨季途中は勝てずに苦しんだが、今季はフル稼働が必須。自身4度目となるJ1昇格を目指して戦い続けていく。
クラブの歴史を知る生き証人と、10年ぶりにJ1へ返り咲いたDF

松本でクラブ3番目の在籍期間を誇る橋内。今季は巻き返しを図りたい。写真:徳原隆元

35歳にして10年ぶりにJ1の舞台へ返り咲いた石井。徳島の最終ラインを統率する。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)
この橋内と1年だけ徳島でともに戦い、彼の移籍後は最終ラインの統率役を引き継ぐ形になった35歳の石井秀典も目を引いた存在のひとり。かつて市立船橋高の同期だったカレン・ロバート(ローヴァーズFC代表)も「とにかく真面目で努力家。リーダーシップもある信頼できる男」と評したように、2014年以来のJ1挑戦となる徳島には欠かせないDFと言っていい。彼自身も11年以来、10年ぶりにJ1の舞台へ返り咲いた。
しかも今季の徳島はダニエル・ポジャトス新監督が新型コロナウイルスの入国規制によっていまだに来日できていない状態。甲本偉嗣コーチの下、オンライン指導が続けられているが、やはり不安は募る。4日のセレッソ大阪戦に敗れた後、「伝える難しさを感じている」と甲本コーチも苦悩の様子を浮かべていた。そんな不安定なチームを少しでも前向きにさせるべく、石井は奮闘している模様だ。
「今季はDFからのビルドアップをテーマに掲げていますけど、立ち位置や個人の判断をもっと上げて、突き詰めないといけない。うまくいったときは相手を揺さぶることができるので、続けていくことが大事だと思います」と本人も語る。開幕までに一体感ある強固な集団へと引き上げるためにも、彼がやるべきことは少なくない。
文●元川悦子(フリーライター)